Op.Ⅱ "Voile"

次の国に入り、旅を続けていた。幸いだったのは、私の居た国の周辺の国々は治安が安定しており、何かの事件に巻き込まれるといったようなことは無かった、ということだ。しかし、とある問題は確実に私の足元に忍び寄っていたのだ。

空腹が限界になっていた。元の国では言葉が難なく通じたのであるが、隣国では強い訛りの影響で中々言葉が通じない。乾パンも水も完全に残っていたが、それを今消費してはいけないと思い、食べなかった。

市街地の日陰の路地で倒れそうになっていたとき、そこを通りかかったとある女性が声を掛けた。幸運なことに彼女の発話にはあまり訛りが無く、とても聞き取りやすかった。


"こんなところに1人でどうしたの、お嬢さん。"

"旅。"

"まあ!それはどうしてか、教えてくれる?"

"母を探してる。"

"そうなのね。片腕が無いのに、本当によく頑張っていてすごいわ。"

"…"


不運なことに、ここで私のお腹が音を立てた。


"お腹が空いているの?"

"…"

"何か食べ物を買ってあげるわ!好きなものを食べてちょうだい。"

"…え。"

"そこでそのまま待っていてちょうだい!"


もう何も話す力も無かったため、言われずともここに座り込んでずっと止まるはずだった。 そうして、彼女は私に大量の食糧を買ってきてくれた。


"ありがとう…!"

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る