天才お嬢様の好感度がなぜかカンストしてる件
夜空 叶ト
プロローグ 天才お嬢様が家に不法侵入してきてる件
「はぁ。最近の授業は結構むずいな。流石は進学校。高校二年の頃から大学受験を意識しまくった内容だな」
「だよな~
「そりゃあ、ある程度はな。そういう
「僕? そこまで詳しく何をしたいかとかは決めてないんだけど。大学には進学しようと思ってるよ。せっかく名門私立に入学できたんだしね」
県内トップの進学率を誇る超名門私立高校でいわゆるお嬢様や御曹司などの超金持ちが通うような学園だ。
ハッキリ言って俺みたいに一般家庭出身の生徒の方が少ないまである。
「それもそうだよな。俺もできるなら大学に進学したいわ。そのほうが将来的に就職の選択肢も広がるしな」
「考え方が大人だね。僕はそこまで先の事は考えてないかな。僕は、この学園でどうやって彼女を作るかに心血を注ぎたいからね!」
「まあ、楽しい青春を過ごすのも大切だとは思うけどな。色恋にかまけすぎて成績を落とすなよ?」
「成績上位者が言うと違うね~。まあ、言われなくても成績を落とすほどに色恋に傾倒するつもりもないよ。ご忠告どうもね」
雄介はそう言ってにっと歯を見せて笑う。
明るい金髪とこの人に好かれやすい性格で学園内でもかなり友達が多い部類だと思う。
俺と雄介は同じ一般家庭出身という共通点があって一年の頃から仲良くしている。
「別に俺もそこまで成績に余裕があるわけじゃないけどな。努力しないとすぐに振り落とされそうだ」
「またまた。まあ、陸斗が成績を落とすとか想像できないけどな。真面目だし」
「そんなでもない。マジで気を抜くと成績下がりそうで不安なんだから」
最近は真面目に振舞ってはいるけど、俺は元々ヤンキーだった。
中学二年の頃に脱ヤンキーをして、必死の勉強の末にこの学園に入学できたんだ。
頑張っていい大学に行っていい企業に入らなければ。
「ま、なんかあったら相談してくれよ。最近じゃあ、あの天才お嬢様こと
「その話か。やめてくれ。もううんざりしてるんだ」
天城乃々は我が学園でもトップクラスの学力と家柄を持つ少女だ。
容姿も抜群で様々な男子生徒に告白をされては冷酷に撃沈しているという噂を聞いたことがある。
綺麗な黒髪を腰の上くらいまで伸ばしていて、落ち着きと賢さを感じさせる夜空のような紫色のタレ目で常に背筋が伸びてて姿勢がいい。
全ての行動に気品を感じさせるような女の子だった。
「一体何で付きまとわれるようになったんだよ。お前らに接点とか無かっただろ?」
「ないな。だからこそ怖いんだよ。ずっと付きまとってくるし、男子共からはやっかみを買うし。なんだか、心が休まらないんだよ」
「そりゃあ、贅沢な悩みだな。天城さんに付きまとわれるなんてこの学園の男子生徒の夢みたいなもんだぞ?」
「ぜひとも代わってくれ。最近あいつのせいでまともに寝れてないんだ」
最近では夢にまで出てくるようになってしまった。
本当にやめて欲しい。
俺はただ、純粋に学園生活を終えていい大学に行っていい企業に入って母さんを楽させたいだけなんだ。
「ご愁傷様。僕にできることは何も無いから応援くらいしかできないね。まあ、今日の帰りはつけられてないから良いじゃないか。最近毎日のようにつけられてただろ?」
「まあな。だから、多少不気味でもある。いきなりつけてこないから。何か変なたくらみでもしてるんじゃないのかってさ」
「考えすぎだろ。天城さんにもいろいろと用事があるんでしょ。流石に毎日君に付き合ってるほど暇じゃないんでしょ」
「だよな。俺の考え過ぎだよな。ありがと。そう言われるとなんだか心が軽くなったような気がするよ」
そうだよな。
あいつだって天才お嬢様って言われてるような人だ。
常に暇なんてありえない。
きっと何かしらの用事があったんだよな。
「そうだそうだ。ちょっと自意識過剰になったんじゃないのか?」
「かもしれないな。雄介のおかげで自分を見直せたよ」
そうだ。
付きまとわれてるからって常に俺に構うわけじゃない。
あっちもいろいろと忙しいはずだ。
「別にいいさ。お礼をしたいって言うなら今度のテスト勉強に付き合ってくれよ」
「任せとけよ。お前が90点台取れるくらいに勉強を教えてやるさ」
「……そこまでは良いかな。じゃ、僕はこっちだから。また明日な陸斗」
「おう。また明日」
手を振って雄介と別れる。
俺は一人暮らしをしているアパートに向かう。
秋の心地いい風が全身を撫でてくる。
こんな日には部屋でのんびりと勉強をすることにしよう。
「よし。帰ってからの予定は決まったな」
少し気分を上げながら帰路に就く。
勉強をする楽しさを少し前に知った俺は勉強がしたくて仕方ない。
ウキウキしながらアパートの扉を開く。
「おかえりなさい。ご飯にする? お風呂にする? それとも わ た し?」
「なんでお前が俺の家にいるんだよ……」
扉を開けるとそこには満面の笑みで俺のことを出迎える天才お嬢様こと天城乃々が立っていた。
なるほど。
ここにいたから今日の帰りは付け回してこなかったってわけね。
「なんでって、なんででしょう?」
ふふっと可愛らしい笑みを浮かべながら彼女は口元に右手を添える。
美人はどんな仕草をしても絵になるなとこの時初めて思った。
「質問に質問で返すなよ。というか、どうやって侵入した? 鍵はかけていたはずだが?」
「合鍵を作らせていただきました。これでいつでもここに通えますね。通い妻、という奴でしょうか?」
「絶対に違う。間違っている」
早速頭を抱えたくなってきた。
家に帰ったはずなのに、全然心が休まらない。
休まらないどころか急激に疲れ始めてる。
「何が違うんですか? 殿方の家に女性が甲斐甲斐しく通うのですからそれはもう通い妻でしょう?」
「間違ってはいないはずなのに、何かが致命的に間違っている。てか、合鍵なんてどうやって作ったんだよ」
「……秘密ですっ!」
ウインクをしながら彼女はペロッと舌を出している。
無性にイライラするなオイ。
「そうか、今すぐそのカギを置いて帰ってくれ」
合鍵がある限り俺の平穏が戻ってくることは無い。
なんとしても回収しなければ。
「良いですよ。はいどうぞ」
「……え? あ、うん。ありがとう」
もっとしつこく粘るかと思ったけど案外あっさりと返してくれた。
そこに関しては感謝だ。
「じゃあ、失礼しますね」
「あ、ああ。一応気を付けて帰るんだぞ」
こんなストーカーまがいな事をしてくる奴でも一応は女の子だ。
まだ真っ暗ではないとはいえ、暗くなりつつある時間帯だ。
一応気を付けて帰ってほしい。
「はい。ご心配頂きありがとうございます」
流麗な動作でお辞儀をしてから天城は家から出て行った。
出て行ったのを確認してすぐに俺は鍵を閉める。
これで平穏が戻ってきた。
ガチャ
「ただいま戻りました。あなたの愛する妻です」
「……鍵は回収したはずだよな?」
「いつから合鍵が一つだとお思いになっていたのですか? 複製品は山ほどありますよ?」
「金の無駄遣いにもほどがある」
合鍵を作るにしてもそこまで安くはないはずだ。
それをこいつは一体いくつ作ったって言うのだろうか。
考えるだけで寒気がする。
「そうですか? 愛する旦那のためですもの。これくらいのことは簡単にしないと」
笑顔でそう言う彼女からは薄ら寒い狂気のようなものをヒシヒシと感じる。
一体どうしてこうなってしまったのだろうか。
付きまとわれ始めたのは確か……高校二年に上がってからだった気がする。
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