神様と11人の私

@rawa

#1神様と11人の私

神様と11人の私(1)

1「一人目の楽天家」


私には、周りが誰も知らない話し相手がいる。

会ったこともないし、声も知らない。

生配信の視聴者同士で、チャットを送りあった。


会うとか電話するとかは、怖いので控えている。反抗期だろうと、そのくらいの分別はある。


なんとなしに、スタンプを送る。

すぐにメッセージが返る。

いつもの会話の始まりだ。


《こん。学校行った?》

《うーん、早退だけど》見栄を張る。

《やるやん》

《まあね。そっちは?》

《必修とかないし、自主休講。追い詰められてるけど本気になれない》

《そっか。ゲームの戦果は?》

『無敵!』みたいなスタンプが送られてくる。


《ユウは配信したら見てくれる?》

《キリの声がイメージと違ったらやだから見ない。字幕動画なら見る》

《厄介で草》

《でもそれがいいんでしょ?》

《せやな》


別に、学校でいじめられたり、落ちこぼれたりした訳じゃない。

部活には変な気持ち悪さがあっていけなくなったけど、キリのように気を遣わなくていい人ばかりなら違ったのかもしれない。


だけどあいつらは、なんで自分のグループが青春の主役のような顔で振る舞えるのだろう。自分のグループから外れたやつを、異常者のように扱うのだろう。


配信のチャットで同じような言葉が並ぶ様を見て、その時のことを思い出した。

衝動的に、お前ら気持ち悪いと連呼して配信は出禁になった。


そんな私にフレンド申請してくれた楽天家がキリだ。暇してたら楽しそうな奴を見つけたとのことらしい。病んで自棄になってなかったらブロックしてた。


《キリは友達いる?》

《ここにいる》

《私がいなきゃ困る?》

《かもしれない》


そっか。

それならいいんだ。

そんな人がいると知っているから、私は今日もゆっくり眠れる。


《おやすみ》

《おやすみ》

私は、私のスマホと【キリのパソコン】を閉じて眠った。



神様は知っている。

自分の別アカとやり取りしている私を。

キリは私が追い出された生配信の主だってことを。

追い詰められてるのに本気になれないのは、私だってことを。


心を腐らせながら覆いを破ろうとしない私は、ある意味でどこまでも楽天家だ。

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