女子大生の如月繭は就職活動の真っ最中。しかし、自信がなく周囲に誇れる特技もない繭は、いつも自己PRに詰まってしまう。落ち込む繭に母親が手渡したのは、亡き父親のノートだった。父親の迷いや葛藤が綴られたノートを読むうちに、突然、異世界に転移してしまい……。
最前線へ物資を運ぶ輸送隊。兵隊たちが屯す酒場。通信を伝達する魔導研究所。大使をもてなす迎賓館……。異世界で繭が放り込まれるのは、常にトラブルが耐えない仕事の現場です。仕事の喜びや楽しさよりも、責任の重さに怯える悲痛な心情が丁寧に描かれているからこそ胸に迫るんですよ。
現場では悩んでも立ち止まっている暇はない。とにかく手足を動かし、働き続けるうち、少しずつ仕事の勘や要領を掴んで、何もないと思っていた自分が持っていたもの、自分に足りなかったものの形を次第に掴んでいく。異世界で奮闘しながら、働くことの絶望と希望を経験して成長する姿に引き込まれました。
「自分に何ができるのか」、「自分の強みとは何か」。社会に出る前に、多くの学生が一度は立ち止まる問いです。しかし立ち止まっていては、いつまでも正解は出ません。まずは目の前の仕事に真剣に向き合うことで、見えなかった自分が少しずつ見えてくる。将来に悩んでいる人に是非おすすめしたい作品です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)