担当アイドルたちが急に『彼氏います!』と言い始め、焦っていたら自分のことだった件について

普通

え、僕が彼氏?

あるアイドル事務所の一部屋。部屋にはテレビやソファーなどもあり、早く事務所に来た人はここで暇をつぶしたりする。




そんな事務所の一部屋である青年とアイドルが隣同士で座っていた。



「ねぇ、マネージャー?」



「なんですか?」



「どこか出掛けない?」



「出掛ける予定はありませんね」



「え~どこか行こうよ。マネージャーとだったら、どこでもいいよ」



「ダメですよ」




そんな話を青年と少女が会話をしているとテレビでニュースが報じられた。



「国民的アイドルグループ、『十色といろ』がドームツアーを行い、多くのファンを熱狂させました。ですが、ライブの終了間際にメンバーからの発言が物議を醸しだしています。その詳細については」



青年はテレビを消して、また隣の少女に視線を移した。



「なんであんなことをしたんですか?」



「あんなこと?」



「はい、あんなことです」


青年の問いかけに少女は少し悩んだ末に、何について聞かれているのかやっと理解したようだった。



「ああ、ライブのこと?」



「ライブのこと以外に何があるんですか?」


青年は怒っているわけでもなく、ただ単に疑問に思っているのだろう。



「あのライブのことならあんな風に発表しちゃったのはとってもごめんなさいと思ってるよ。それはマネージャーにもプロデューサー、メンバーにも言ったよ」



「それはそうですけど、ああいうことは発表しなくてもいいんですよ」



「でも、嘘は付きたくないし」



「……そ、そうですか」


そう言われるとマネージャーと呼ばれている青年は何も言えなかった。純粋に『嘘を付くのはよくない』と言われて、マネージャーはなにも言えない感じだ。



「それに私はまだアイドルをやっていくつもりだし。嘘をずっと付いているといつかバレた時にもっと大きなことになっちゃうと思うし、相手にも迷惑が掛かるかもしれないじゃん」



「…そうですね」


マネージャーは深刻そうな顔をしながらも、静かに少女の言葉を聞いている。しっかりと意図を理解しようとしている姿勢はまさしくマネージャーのようだ。



聞き終わったマネージャーは少し突っ込んだ質問をした。



「雪さんが言いたくないんだったら無理に詮索はしないんだけど、雪さんが付き合っているお相手って僕の知っている人?」



「知っている人?」



「うん。芸能界の仕事に精通している人であれば、ある程度の口裏を合わせることもできるし。これから仕事をしていく上で色々と気を付けなくちゃいけないこともあるから」



「芸能界の人ではないかな。表に出る仕事はしてないし」



「そうなんだ」



「でも、優しくて私をいつも包み込んでくれるような包容力のある人」



「へぇ…」


青年は少し関心していた。雪は恋愛についてあまり興味を持っていないと感じていたからだ。グループメンバーで「あの俳優さん、カッコよくない」とかの話になった時も「別に普通じゃない。興味ないわ」とか言う人だからだ。




「いつも私のことを支えてくれるから、私はここまで頑張って来れたの。本当に感謝しかないよ」



「そうなんですね。雪さんにそんな風に想われる方がいるなんて余程素晴らしい人なんですね」



「うん!すごい人!」


雪と呼ばれている少女は力強く頷き、青年の言葉を肯定する。




「私のマネージャーはすごい人!」



「そう言ってくれるのはありがたいけど、自分はただサポートしていただけだよ」



「そのサポートがすごいって話。私はマネージャーが私の担当をしてくれなかったらとっくにアイドルなんか辞めちゃってた」



「そんなことないと思いますけど」



「謙遜しなくて大丈夫だよ。これからは私がマネージャーのことを支えてあげるから」



「…そういうセリフはもっと大事な人に言うべきだと思いますけど」



「ううん。マネージャーより大事な人なんていないよ」



「い、いや…彼氏さんのことをもっと大切に扱ってくださいよ」



「うん。大切にするよ!」



「それなら僕じゃなくて……」



「何言ってるの。私の彼氏はマネージャーだよ」


しばらく青年と少女はお互いに見つめ合い、静寂が包む。





1分ぐらいが過ぎて、青年は少女に問いかける。



「誰が彼氏?」



「マネージャー」



「ほんと?」



「本当に決まってるじゃん」



「そ、そっかぁ……」




それから青年は少女を置いて、廊下へと出る。


「どうなってるの!?」



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