幻想プラシーボの治療〜坊主頭の奇妙な校則〜
蜂峰文助
坊主頭の奇妙な校則
【1】
もしも突然、隣にいた人がバリカンを稼働させ、自分の髪の毛を剃ってきたらどう思うだろうか?
いきなり、自分の髪の毛を剃られ、坊主頭にされることを良しとするだろうか?
各々価値観があり、その人の生活環境、髪型に対する執着度、美意識の差によって、答えは異なってくると考えられる。
しかし、あえて自分の立場から、この質問に答えるとするならば、答えはNOである。
坊主なんて、絶対に嫌だ。
オレは自分の白髪に、美意識を持っている。
それを無理やり剃ることは、その美意識を踏み躙る行為に他ならない。と、オレは考える。
では次に、自分の価値観が他者に歪められ、やりたくもないことを違和感なくさせられてしまう状況に陥った場合、自分はそれを良しとすることは出来るだろうか?
一例として、こちらもオレの立場から答えを述べると、NOである。
絶対ごめんだ。
さて、ここまで二つの問い掛けをした訳だが。
これから語る物語において、この二つの質問は強く絡み合っている。
坊主頭と価値観の歪み。
その学校に通う生徒、職員、関係者――ほぼ全員が、『坊主頭にするのは当たり前』と思い込まされていたのだ。
『坊主頭こそ思考の髪型』だと、価値観を歪められていたのだ。
現に、オレが任務として通った
右を見ても、左を見ても、前を見ても、後ろを見ても坊主頭がそこにあった。
坊主頭の生徒達、教員のみで構成されたクラス、学校というものは……異質な光景であり。
異様な光景だった。
教員、事務員はともかく――
おおよそ、自主性を謳いがちな、この令和の時代における若者達が、右に習うかのように、違和感なく、その校則に従っていることが、何より不思議で異様だった。
校則――『薄池高校に関わる者は、一人の例外なく――坊主頭にならなくてはならない』という校則。
誰も彼もが、その異様な校則にしたがっていた。
価値観を歪められ、それが当たり前だと、洗脳されてしまっていたのだ。
にわかには信じ難いかもしれない。
しかし、現実にそれは起こっていた。
【幻想プラシーボ】という病によって、引き起こされていた。
思い込みを現実にしてしまう心理的感染症【幻想プラシーボ】によって。
だからオレは、薄池高校へと潜入した。
この異様な価値観を正すために。
【幻想プラシーボ】の治療をするために。
これから語る物語は、そんな『坊主頭の幻想プラシーボ』に、治療班とも言えるオレたちが立ち向かう、ちょっと不思議な物語だ。
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