第31話 太古のケットシー達
「根はどこまで広がってるにゃ?」
古代魔樹「ずっと向こうまで?」
「もしかして、爺が動くと大陸が割れてマグマが出るレベル…?」
古代魔樹「マグマ…?」
「大陸の、地面のずっと下にある、融けた岩みたいなものにゃ」
古代魔樹「ああ、下の方向に根を伸ばし過ぎると抵抗がなくなって、温かい海みたいなモノに触れるが、それの事か…」
「〝温かい〟なんてもんじゃないはずにゃんだが…。確認にゃが、地面は平らじゃなくて丸い球状だって知ってるにゃ?」
古代魔樹「おお、よく知っとるの。誰に言っても信じてくれんかったんじゃが、あっちの端に伸びた根が、真反対方向に伸ばしてった根とぶつかるんで、多分地面は丸いんじゃろうと思っておったよ」
「……オマエは動いちゃダメにゃ…。〝
古代魔樹「ううむ……残念じゃの。やっぱり死ぬか……」
「……体を捨てて、一部分だけ切り離すとかできないにゃ?」
古代魔樹「……できないな。小さい体では魔力が保持しきれん。
……というか、そうじゃ、オモイダシタぞ!!」
「なんにゃ?!」
古代魔樹「確か十億年ほど前にケットシー達の協力で、切り離しを試した事があった! あの時は、地面の下に張り巡らせた根に残った魔力が全部爆発して、地面がボロボロになってしまって失敗に終わったんじゃがの。お主がさっき言っていたマグマ? が地表にあふれて、地上にいる生き物が絶滅仕掛けてしまったんじゃ…」
「にゃんでそんな大事な事覚えてないにゃ! ……でも十億年前なら仕方にゃいのか?」
古代魔樹「じゃが、色々思い出した、その時分かったんじゃ、方法が。ケットシーの協力が必須なんじゃが…ケットシー達が居なくなってしまったんで忘れておったんじゃよ。じゃが、今ならお主が居る! 手を貸せ!」
「……俺?」
古代魔樹「うむ。儂やそこに居る鬼のように実体を持つ魔物では保有できる魔力に限界があるが、魔力そのものと言える存在である妖精族なら、魔力量に上限がない。儂の地面全部に行き渡っとる魔力も制御できるはずじゃ」
「…そうにゃん?」
古代魔樹「儂が分離した後、地中に残した魔力が暴走しないようお主に引き継げばいい。制御する者が居れば暴走しないで済む」
「……できる気がしないにゃ。俺の魔力は今上限7万弱ってところにゃ。それ以上の魔力をもらっても容量オーバーにゃ」
古代魔樹「…なんじゃお主ケットシーの癖に、魔力の扱い方が分かっとらんようじゃの。まぁ
ものは試しと言ってみた。
「教えてくれにゃ」
実は……人に教えを請うのは抵抗があるのだが。
古代魔樹「儂がか? う~む……」
うん、まぁそうだろう。何のメリットもなく人に知識を教えてくれる者など居ない。
古代魔樹「いいじゃろ。儂の知ってる範囲であれば、全て教えてやろう」
……断られるかと思ったのだが。というか、ほいほい教えてくれる時は嘘を疑いたくなる。
古代魔樹「お主が魔力をきちんと扱えるようになれば、儂の手伝いをしてもらえるからの」
なるほど、お互いに対価のある取引という事なら納得できるな。
俺が、人に教えを請うのに抵抗があるのは、前世の経験があったからだ。
学生時代も、友人や先輩も人に何かをタダで教えるのは嫌だって奴ばかりだったし、社会にでてからも同様だった。
世の中にはなんでも無償で親切に教えてくれるという人間が居るとも聞くのだが、俺の周囲にはそういう人間は見当たらなかった。多分、物語の中の架空の存在なんだろうな。
現実では、金を払って教えてもらうケースでも、本当に重要な部分は教えなかったり、嘘を教えたりするのが普通だと聞く。
とある有名な武道の道場で、師範がやたら「力を入れろ、力が足りん!」と指導していたが、実は極意は〝力を抜くこと〟だった、とかいう話をネットで読んだ。極意に気付いてしまったある弟子がそれを周囲の弟子に伝えたところ、師匠が「俺が苦労して気付いた事を簡単に教えおって」と師匠が怒り、破門されてしまったとか。(破門になった弟子が腹いせにネットに真相をぶちまけたわけだ。)
まぁ、自分が苦労して身につけた技術をタダで簡単に教えて貰えると思うな、というのは人情なんだろうな。
そんな事をまだ理解してない入社したての頃の俺は、先輩に道具の使い方を教えてくれと言ってしまった事がある。だがその時の返事は「嫌だね」だった。
まぁ、その
ならば「元請け会社の社員を教育してやる義理はない」というのはもっともか。(だからといって簡単な事も教えないのはケチ臭い根性だなと思うが。)
まぁブラックな元請け会社だったので、下請けの人間の根性も捻くれてしまう部分があったのだろうと、今は少しは理解できなくはない。
ただ、教えないだけならまだいいが、もっと酷い事もあった。
下請けの古株(先述の人物とは別の人間)が、珍しく親切にアドバイスしてくれた事があった。だが、実は教えられた内容は嘘で、失敗して客先の備品を壊す結果になってしまったのだ。
軽い気持ちだったのかも知れないが、俺が「嘘を教えられた」と会社に正直に報告した事で問題が大きくなってしまった(当たり前だ)。
なんでそんな事をしたのかというと、どうやら元請けの社員に失敗させて、下請けの優秀さを強調したかったらしい。
その件では俺はお咎めなしになったが、叱責されたその下請け古株の恨みを買ってしまい、その後そいつが辞めるまでずっと嫌がらせを受ける事になってしまった……。
それから、俺は分からない事は人には頼らず、全部自力で調べるようになった。メーカーのマニュアルはネットで検索すれば見られるしな。
学生時代はスマホなど持ってなかったが、幸い社会に出てからは会社からスマホを支給されたので。業務以外の使用は禁止だったが、マニュアルを調べるのは業務だからOKだろう。まぁ業務中にスマホを見てるとサボってるとか言い出す上司が居るので、休み時間や帰宅後にやらざるを得なかったのだが。
正社員の先輩に訊けていたら結果は違ったのか? と思う事もあるが、まぁまともな会社ではなかったので、結果は一緒だったような気がする。教育体制なんかない会社だったしな。中には良い人間も居ただろうが、俺には運がなかったし、人を見る目もなかったしな……。
見る目は今もない。ましてや相手は人間ならぬ巨木のモル爺さんだ。人柄など分かるはずもなし……。
古代魔樹「まぁ儂も昔ケットシーから聞きかじっただけの知識で、自分では体現できん事も多いからの。お主が自分で試行錯誤するしかない事が多いと思うが」
間違ってる可能性もあるってことか?
自分で確かめろと言ってくれるだけ親切か。
まぁ慎重に行こうか。
ただ、モル爺が教えてくれた話は、かなり衝撃だった……。
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