崇拝の女
「あなたにも何か理由がお有りなのでしょう?
話を聞きますよ」
私は女に、優しく諭した。
慈悲の心。
神が私に、そうしてくださるように。
慈悲に満ちた私の言葉を、女は鼻で笑った。
「話を聞いてほしいのは、お姉さんじゃないのー?」
私が知らない女に?
私がお話ししたいのは、神だけ。
この女に話すことなど、ひとつもない。
今は何時……。
まだ、会合に間に合うかしら。
「無駄だよ?
時間はもう、過ぎちゃーった!」
私は目を見開き、檻に手をかけたまま、崩れ落ちるように床に座り込んだ。
間に合わなかった。
神に、お会いできなかった。
絶望で胸がいっぱいになり、
俯くことしかできなくなった。
女の足音が、私に近づいてくる。
女は私の顎に人差し指を当て、
顔を持ち上げた。
「“神”は、“あなた”を必要としていないよ?」
悪魔の微笑み。
そう思うのに、その目は、“神”と同じ目をしていた。
わけもわからないまま、
私は涙を流していた。
目を覚ましたとき、
私は知らない公園のベンチに座っていた。
外は、もう真っ暗だった。
手の中に、何かが握らされている。
壊された、“神”から買ったブレスレット。
あの女は、誰だったのか。
なぜ、私は捕らえられたのか。
あのやり取りは、何だったのか。
疑問だけが、脳裏に焼き付いている。
夢だったと、思いたかった。
それでも。
壊れた“神”から買ったブレスレットと、
“神”と同じ目をした悪魔の微笑みの記憶が、
すべてが現実だったことを、
静かに、確かに、告げていた。
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