卑屈な男
「どうして、とはどういうことなのか」
それが、わからなかった。
「僕なんか捕まえても……面白くないですよ」
本音だった。
差し出せるものが、僕には何もない。
自分で口にしたのに、胸の奥がひどく惨めだった。
「んー、確かにね!」
女は笑って、あっさり肯定した。
なぜだろう。
期待していなかったはずなのに、腹が立った。
「ぼ、僕だって、わかってますよ……!
面白くないですよね! 僕なんて!」
僕は、なぜか女に否定してほしかった。
こんな僕でも、いいと言われたかった。
それなのに──
「そういうの、めんどくさーい」
女は笑いながら、僕を突き放した。
面倒臭い。
人生で、何度も言われてきた言葉。
胸が、きしむように痛んだ。
「……僕は、どうしたらいいですか」
檻の中にいるのに、
見捨てないでほしかった。
遊ばれてもいい。
利用されてもいい。
それでも、見捨てないでほしかった。
なぜかは、わからない。
ただ、そう願ってしまった。
「人に聞かないと、なーんにもわかんないの?」
女は首を傾げ、楽しそうに笑う。
───可愛い。
───強い。
なぜか、支配されているはずの女に、僕は惹かれていた。
憧れていた。
その強さに。
僕にはないものに。
ずっと欲しかった、自信に。
女は椅子から立ち上がり、僕の前に来た。
何をされるのだろう。
……なぜか、期待してしまった。
───バチン。
額に、軽い衝撃。
デコピン、された……?
僕は目を丸くして女を見る。
女は、ただ微笑んでいた。
目を覚ましたとき、
僕は知らない公園のベンチに座っていた。
手には、縁結びのお守りが握らされている。
あの女は、誰だったのか。
なぜ、僕は捕らえられたのか。
あのやり取りは、何だったのか。
疑問だけが、脳裏に焼き付いている。
夢だったと、思いたかった。
それでも、
額に残る痛みだけが、
すべてが現実だったことを、静かに告げていた。
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