第10話 父

「…最初から父親を殺せばもっと楽に、それこそこいつはアンタのお望み通り、幸せになれたかもしれないのに。」

あの悪魔が言った"父親"は、義父なのかそれとも悪魔本人なのかわからない。


天使は先程おきた出来事を整理している。また同時に、空を泳ぐ鳥たちを追うように、羽を動かす。どこかに行くようだ。再度考える。


だけど…本当の黒幕はあの悪魔だ。

さとみ様の全ての始まり。


天使は急ぎ主のいる気配へと向かう。

贖罪の終止符を打つ為か、はたまた免罪符の為か






事は少し前。一つのワンルームから家主が逃げ出した後のこと。

堕天使は去り悪魔が一人、部屋に佇んでいた。

玄関前、主を追うことを辞めたのだろうか。否、

絶大な気配を感じ待ち構えていたのだった。


その者は堕天使の羽を頼りに場所を嗅ぎつける。

「ここからだ。ここから匂う。あの女の匂い。」

喜びが口を綻ばせる。ドアなど物ともせず通り抜けて侵入する。

「悪いけど、俺以外いないよ。」

入るや否や、悪魔は言葉を投げる。その者に向けて。

「匿うか。堕天使の女を出せ。」

凶々しい杖のような槍のようなものが、奴の手に現れた。それだけで、そこら辺の天使共なら跳ね除けてしまうくらいの代物だ。

「そんな面白い話あるかよ。俺、悪魔だぜ。」

「我にとっては皆同じ。理由にはならん。」

カチンとくる頭を宥めるように悪魔は口を動かす

「あっそう…。じゃあどうぞ上がって下さいな。そんな事してる暇あるなら追いかける方が得だぜ?」

「何処へ向かった。」

「そこまでは。ただ主のところだろうよ。」

「だから何処だと言っている。」

「今主いないからわかんねーよ。ここまで来たみたいに、また匂い追っていけば?」

凶々しい代物が悪魔の首に突きつけられる。

「殺したってなんも出ねぇけど。」

悪魔はケタケタ嘲笑する。

その態度に信用を汲んだのか、諦めたのか。

「羽を持ってるだろう。匂う。寄越せ。」

(うわこいつそんな事もわかんの?鼻よすぎ。

犬かよ?怖…。)

口に出す事は不敬と心得る悪魔は素直に従う。

「そう遠くはないか。」

瞬きの間、その者は姿を消した。

「うわー行きたくないわ。これから昼ドラ見なきゃなんないのかな?俺。」

うっすらと主の気配がする。人格が交代したみたいだ。

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