第7話 質疑応答
「やめてよ。痛がってる。」
さとみが悪魔を制する。悪魔の手から放された天使の首はがっくりと下に落ちた。手にはしっかりと未来図鑑を抱えて。
するとその堕天使の主は前にしゃがみ、優しく堕天使に話しかけた。真っ黒な頬を撫でる。
「アヴェリー。君はどうしたいの?
俺はね、君が持っているその未来図鑑が欲し い。もちろん、その図鑑を仲介するのは君だ。だから、」
「私はずっと!ずっと……何千年と、貴方を待ち…恋焦がれて…ここまで…待ってたんです。たとえ堕ちても、羽をもがれても輪が砕けようとも。
……邪神にこの身を喰われても。何を欺いてでも。」
「俺は、千年も前から生きてないよ。誰かと勘違いしてるんじゃないのかな。」
堕天使は顔をあげた。主と目が合う。その交わす目の中に何処にも光は差し込んでない。
「まだちゃんと未来図鑑の事、把握しきれてないんですね…。」
「つまりは、かけた、繰り返した時間って事だろ。なのに、なんで俺の事気づかなかったんだ?」
悪魔が水を刺した。
つまるところそうだ。私は頷き
「…私はさとみ様が生まれた時から今に至るまで
何回と時空を繰り返しました。でも一体。」
人間の人生に触れてはいけないという規約を破ってまでも。さとみ様をここまで生かし、著者に選ばれる為に全て手をまわした。
…何処にも落ち度はなかったはず。
「じゃあいつ、さとみ様はこの悪魔と契約したのですか?」
「俺は覚えていないんだ。物心つく前からこの悪魔がいたのは記憶にある。っていっても関わり始めたのはほんの数年前からで、それ以前は悪魔との記憶はほとんどない。」
主人が悪魔に目を遣る。説明を求めているようだ。それに応じる様に目を瞑る悪魔。
「そりゃあまあな、こいつの本当の人格なんて。あの男を前にすれば保って2、3歳が限度だろ。」
「2、3歳…?もうその時には別の人格が形成されていたんですか?」
「さぁ?俺はそんなの知らん。別にこいつに他の人格が居ようが関係ないしな。まあ、その他の人格と天使が契約できた時は流石に驚いたけど。」
「それで…いつ俺と契約したんだ?」
その主人の質問を受けた悪魔の目は何色にも属さない。言葉で表すなら好奇と堕落と邪淫だった。
「おい堕天使。アンタはさ、こいつを幸せにしたかったんだろう?」
主に待てと手を向けて悪魔は問を投げる。
「…はい。」
「なら、なんで最初に考えなかったんだ?堕天使。」
何も答えない。
「アンタはこいつを見初めて全て尽くしてきたんだろう。そしてこいつの取り巻く環境を知っている、それ前提で話を進めるが、どうしてアンタはその環境を作った全ての根源を潰そうと思わなかったんだって言ってんの。」
「全ての…根源?さとみ様の父親のことですか?」
「わかってんじゃん。わざわざアンタが苦労してあの地獄の環境でこいつを生かさず殺さずここまでやってこさせてって…回りくどすぎないか?だったら、最初から父親を殺せばもっと楽に、それこそこいつはアンタのお望み通り幸せになれたかもしれないのに。」
「……………そ、……れは……それだと、」
「著者にはなれない?殺しは禁忌?どっちだ。」
読まれた。いや普通に考えれば想定のつく返答ではある。でもこの悪魔、わかってるんだ。
「いいなよ、自分で。告っちゃえば?本人もいるんだしさ。」
主人と目を合わせられない。
「あれてかもう言ってたっけ。大事な言葉抜かしてさ、やらし〜。」
主人がこちらを見つめる。嫌だそんな。
まるで人間の様な貪欲に塗れた事を口に出すなんて。私は堕ちている。堕ちている、そうであっても。
この先、私は何を口に出しても結果的にさとみ様を傷つけることになってしまうんだろう。私利私欲に溺れたエゴだけに包まれた私を見てさとみ様は一体何て言うのだろうか。
「まあ別にいいや。そこは大事じゃないし。」
沈黙を切る様に悪魔は言う。
「勿体ぶってないで、さっさと言ってくれないか。」
「順序よく喋ってんの。まあ落ち着けよ
二人共さ。」
「まあ、ぶっちゃけて言うと。堕天使。
アンタがもし万が一、さとみと契約する俺に気づけたとして…
なんて事はないんだよ。」
大粒の涙を流していた天使が顔をあげる。
「だって…こいつと契約した時、こいつ腹ん中いたしね?女の。」
空気が変わる気配を感じた。
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