第2章

第10話 【9】学園都市とは



――――何だかとても懐かしい夢を見た気がするんだ。だけどその内容は思い出せない。


「きゃ?」

その時胸の中で聞こえた聞き慣れた声にホッとする。どうしてか無邪気に笑ってくれるのがとても嬉しいんだ。何故だろうな……?


「おはよう、シギ」

「きゃん」

なでなでと頭を撫でれば嬉しそうに笑ってくれる。


着替えを済ませれば、シギが抱っこと言わんばかりに手を差し出してくる。


「うん、もちろんだよ」

そっと抱き上げれば、いつものようにぎゅむっと抱き締めてくる。


居間に向かえばルオさんがもう起きていたのでおはようを言う。それから……。


「朝ごはんを作っている間は、ルオさんといるんだよ?」

「きゃーん」

うぅ……悲しそうな瞳を向けてくる……っ。リュックに入れて背負ってもいいのだけど、ぶつかったりしたら大変だからなぁ。


「シギ。おいで。お前にいいことを教えてやるから」

「きゃーん?」

「お前が眠っていた間にもいろんなことがあったからなぁ。ドラゴンの話でもしてやろう。カッコいいドラゴンになりたいだろ?」

「きゃーんっ!」

どうやらシギはカッコいいドラゴンのワードに引っ掛かったらしい。


「きゃっ」

大人しくルオさんと待つことにしたシギを撫でてやって、俺はルシルさんと朝食の準備に入ろうか。


「ロジー、今日は米を炊いてみましたよ。米は転生者や召喚者にとても人気なのです」

「わぁ……お米!嬉しいです!」

異世界ファンタジーと言えば洋食のイメージだが、わりとどこかに東洋風の国があるものでこの世界にもあったらしい。

しかし……転生者や召喚者が好むってことは日本人の転生者や召喚者が多めだったのだろうか?


「お米があるんでしたら、味噌汁を作りますよ」

まだまだ炊き方は難しそうだが。

「おや……それは楽しみですね」

笑顔で頷くルシルさんと共に早速朝食の準備である。いつか俺も米を炊けるようになりたいな。


朝食をこしらえて居間に戻ればアルさんも起きて来ていた。


食卓に付けばシギが一目散に俺のところにとたとたと来てくれたので膝の上に座らせてあげる。


「きゃん、きゃーんっ!」

そして膝の上でなにやらポーズを決めてくる。ルオさんにカッコいいドラゴンの話をしてもらったからだろうか?


「なかなか熱心だったぞ」

とルオさん。


「きゃんっ!」

シギがふふんと鳴く。今は背伸びしているところもかわいいに尽きるのだが。


「きっとカッコいいドラゴンになれるよ」

シギなら何となくそう思う。しかも黒魔竜だなんて字面からしてカッコいいじゃん。黒い鱗もカッコいいしなぁ。


「きゃーん!」

シギは嬉しそうに答えながらも、朝食の匂いにも興味津々なようで。早く食べたいとばかりに指をくいっと向ける。


「まずは白米からかな?」

簡単に卵とそぼろ肉でふりかけを作ったので見た目も美味しそう。シギの食欲もそそるようで。俺たちは早速和風朝食を堪能した。


――――そして、朝食後暫くして。


「お待たせ、ロジー!」

レベッカが顔を出してくれる。


「レベッカ!いらっしゃい」

「お邪魔します」

とは言えここは魔帝城の一部。レベッカの実家の一部でもあるわけだが。それでもレベッカは礼儀正しいなぁ。


「ねぇロジー、お勉強の前に聞いたんだけど!」

「うん?」

「今日の朝食はお米を食べたって聞いたわ!」

話が早いっ!?食事の話ならルシルさんだろうか?


「私も食べに行きたかったけど、朝食はお父さまとって。お父さまったら娘離れがなかなかできないのよ」

「あはは……でもレベッカもまだ子どもなんだし」

忙しいであろう魔帝とは言えまだまだ娘と朝食くらいは楽しみたいってことかな。


「私もう13だし、それからロジーよりも年上なのよ?」

あ……そうだった。


「少しくらいならいいと思わない?」

「ならルオさんに相談してみる?」

「いいかも!お父さまがまたずるいって言うかもしれないけど!」

レベッカがふふふっと笑う。そう言えばルオさんって魔帝さまも含めて崇める神さまだもんなぁ。しかし魔帝さまにそれを言えるのもルオさんくらいなのではなかろうか?


「もしよければ昼はこっちで食べる?お米とふりかけの残りがあるから」

「もちろんそのつもりよ!お父さまはお昼はお仕事の会食なの」

魔帝さまが悔しがりそうではあるが……でもレベッカがわくわくと楽しそうなので。


「お昼ご飯が楽しみね!でもその前に……お勉強ねっ!」

「そう言えばそうだった」

レベッカと一緒に学園に通うために……俺も読み書きを覚えないとな。


※※※


レベッカに文字を習いながら、例の学園の話になった。


「この世界の各地には魔法学園のある魔法学園都市があるの。国も種族も関係なく優秀な学生たちが集まるのよね」

「へぇ、楽しそう」


「でしょ?でね、中には冒険者向きの授業もあるんですって。ルオが頼んでくれて、入学したら私も冒険者登録していいってお父さまが」

「そうなの?じゃぁお揃いになれるな」

「うん!」


「でも学園って……いつから通うんだ?」

「通えるのは13歳からよ。ロジーは飛び級だけどね」

「うん……そのためにも頑張らないとな」

仲良くなれたレベッカと一緒に通えるのならそれほど嬉しいことはないよな。


「まぁそのためには魔法や実技の練習もですね」

お茶菓子を持ってきてくれたルシルさんが告げる。

「俺に、できるかな」

「もちろん。だってあなたも私たちと同じ魔人です。私たちのかわいい末弟なんですよ」

「は、はい……!」

ルシルさんがぽふぽふと頭を撫でてくれる。


魔人になってどうなることかとも思ったが、こんなに頼もしい兄弟ができるなんてな。



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