第9話【番外編①】太古の記憶
――――太古の遺跡。そこには竜のゆりかごがあった。
「昔々の話だ。その遺跡を探索した伝説のSS冒険者がいた」
静かに神が語り出す。
「冒険者はこことは異なる世界の記憶や知識を活かし、誰も踏破したことのない遺跡ダンジョンを踏破し、2つの竜の卵を手に入れた」
それを無言で聞くのは彼の眷属だ。
「しかしその功績を羨んだ大国グローリアラントの王はSS冒険者を騙して2つの竜の卵を手にした」
それこそが世界が歪んだ根本。眷属はそれを思い出し静かに目を閉じる。
「そうして2つの竜の卵から白い竜と黒い竜が生まれた」
「1匹は伝説の皇天竜。光輝くほどに美しく生まれたその瞬間から人語を介した。王はとても喜んだ」
「おや、やはり知っていたのかい?そしてもう1匹は……」
「黒く醜く、獣の言葉で鳴くことしかできなかった」
無論彼らは醜いなどと思わないが。
「王は黒い竜をいらないとし、魔物に食わせて処分させようとした。黒い竜は魔物の巣に放り込まれ恐怖の中で泣き叫んだ」
「酷い話だ」
「そうだね。しかしそこに助けに来てくれたのはSS冒険者だった」
「密かに彼らを取り戻そうとしていたのか」
「そう言うこと。でも1匹は国の象徴として崇め奉られた。SS冒険者とは言えど国家権力の前にはどうすることもできなかった」
「だから黒い竜だけでも」
「そう。だから黒い竜に『シギ』と名付け、小国クォーティア公国でひっそりと暮らした」
「懐かしい国の名だ」
「お前にとってはな」
「ああ。それにその頃のことは聞いてる。シギは成竜になってようやっと人語を介し始めても、まだ空を飛ぶことができなかった」
「そうだったねぇ」
「それでもSS冒険者は……あの人は変わらずシギを愛した。だがある時あの人はは何も言わずに去ってしまった」
「シギは毎日悲しくて悲しくて泣きはらしただろうね。SS冒険者の元へ行きたい。その思いがシギを上空に舞いあげた」
「あの人の匂いのする場所へ、シギは急いだのだろう」
「ああ。だがそこでシギが見たものは天空で咆哮をあげる成竜と化した皇天竜。皇天竜の無数の光の槍に貫かれ、首と胴を離されたSS冒険者の最期だった」
「……っ」
眷属は苦しげに顔を歪める。
「シギが理解できるはずもないその戦場は侵略した大国グローリアラント王の軍、そしてSS冒険者の死と共に滅びようとする小国クォーティア公国の姿だった」
「シギは何も分からず、どうしてあの人が死んだのかも分からなかったのだろう」
「ああ。だからただ悲しみと怒りのままに成竜と化し暴食の竜となった。シギは皇天竜そのものを食らい、敵陣を食らい、大地を呑み込んだ」
「そうして最期にあの人の首と身体を抱き締め、自分自身も共に食らったのか」
彼が使っていた大剣だけが残され神の眷属の手に渡ったが。
「そうだね」
だから神は呟いた。
【神の末席にあたる皇天竜を呑み込んだことで神性を帯びたのか】
シギが理解できない単語の羅列。
【だがお前の中にあるものは……そうか……お前も魔竜か。なら……俺の子であることに代わりない。お前の願いは何だ】
その後の世界で、世界で最上級と呼ばれた皇天竜を食らったシギは天災級の黒魔竜として恐れられ伝説として語られることになる。
だが真にシギが願うことは。
『もういちど、ロジー、会いたい』
【そうか……お前がまた闇に落ちないよう。今度は俺の加護を与えよう】
「そうしてまた、生まれ、出会ったんだ」
「ああ。だから……今度こそ守って見せるよ」
「そうだな、アル」
神と眷属はそう頷いた。
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