第4話 白桜 凛(しらざくらりん)

「お大事二…ネ…キヒッ…!」

診療室からどこか怪しい女性の声が聞こえる。


超人高校1年生、16歳。警察部書記。

腰まで届く金髪のロングヘアー、深紅の瞳。身長は158cm。胸はそこそこ。


休憩の合間に本を読んでいた凛は、表紙の見えないブックカバー越しに内容を追っている。

「女の子同士…イイッ…キヒッ!」

声の端々から想像できるのは――少女同士の恋愛のようだ。

そこへ、臨時助手の男性職員が駆け込む。

「大変です!洞窟奥地から救助要請です!今すぐ向かってください!」

凛は顔も上げず、淡々と返す。

「わたシは今忙しノ……他の人に当たってナさイ……」

職員はさらに説明を試みるが、凛のページをめくる手は止まらない。

「女性からの申請だったのですが……」

凛の指先が一瞬止まる。ピクリと反応したその動きに、職員は言葉を失う。

「……場所ハ?」

「お忙しいのですよね?だから他を……」

「教えナさいッ……!」

その気迫は、職員に緊張を走らせた。

「……姉坂にある双子山の洞窟です」

「待ってナさィ……わたシの彼女……」

そう言うや否や、凛は診療室を飛び出した。

職員は呆然と立ち尽くす。

「一香さんから『性格に難アリ』とは聞いていましたが……ここまでとは……」


洞窟。

凛は全速力で駆け抜ける。道中の化け物は用意していた毒瓶と火炎瓶で次々と排除した。

「ちょっと暗ィわネ……」

懐から瓶を取り出し、液体を一口。視界は一瞬にして真昼のように明るくなる。

「待っててェ……わタシの彼女……!」

洞窟を駆け抜ける足取りに迷いはない。

目の前には、赤い枝状の植物――しかし、ただの植物ではない。無数の眼球が付いている。

目を合わせると静止するが、逸らせば枝はメキメキと伸び、襲い掛かってくる。

救援要請を出したと思われる少女は怯え、動けずにいた。

「誰か……!」

突然、緑色の瓶が頭上から飛んできて割れ、中の薬液がかかる。

この薬は市販されている物。しかし、その効能の倍くらいの効果により怪我は瞬く間に癒え、少女は目を見開いた。

「大丈夫……わたシが来たカラ……!」

――助けられたはずなのに、何故か少女の恐怖は増す。

凛は少女を守りながら、赤い植物に向き直る。

「……あなタね……わタシの彼女に傷を付けタ……」

すぐさま火炎瓶を投げつけるも、耐性があるらしく燃え広がらない。

凛は迷わず懐からワイングラスを取り出す。

そのクリスタルのような輝きは、周りを妖しく照らす。

空のグラスは瞬く間に液体で満たされ、凛はそれを飲み干す。

「待っテなサぃ……今ケリをつけテあげル……!」

拳に雷のエネルギーが宿る。

「電影黄龍拳……!」

雷撃の一撃が植物を直撃。落雷の轟音が洞窟に響く。

しかし、化け物はなお倒れない。その刺々しい枝状の体を保っている。

凛は冷静に指を鳴らす。

「領イキ展開……!」

瞬間、化け物は「死」の概念、死神の手のような物に飲み込まれ、そのまま跡形もなく消滅した。

この領域は、女性を魅了・強化する一方で、それ以外には「死」を与える――そんな空間なのだ。


邪魔者の消失を確認する。

「さぁ…これかラわタしとベッドで…」

振り返るが、少女の姿はもうそこにはなかった。

後日、少女は無事に保護された。

しかし、今回も凛は女の子に手を出す事は出来なかったのだった。

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