第14話「創作論バトル」

「どうして、俺が手を貸さなければならないんだ?」


 アンサー、あるいは解として俺が選択したのは。


「私が、夢の為にはあなたが必要だと判断したからです」

「違う。キミの判断や決意は悪いがどうでもいい。平たく言えば報酬だ。俺がエルフの国を再興することに手を貸す代わりに、キミは何を差し出す?」


 シナリオを破綻に導くこと、これしかない。

 破綻させ、管理者世界を呼び出しロールバックを図る。


「キミは俺を優しくないと言った、それは実に正しいと思う。正しいからこそ無償でやるなんて考えないはずだろう? あるいは人によってはエルフの国を再興したという名声のようなものを欲して応じるのかもしれないが、な」


 やや確証に薄い部分ではあるが、このイベントは未来ちゃんが俺を主人公に――いや、このゲームのキャラクターとしてハメるために設置したものだろう。

 ゲームキャラクター化することで何を目しているのかまではまだ検討が付かないけれども、それはともかく。


「もし、再興を果たした暁には、私を――」

「捧げる、なんて言うなよ? 俺はどうやっても、どう見ても人間種だ。キミをもらったその後に、全エルフを俺の奴隷にするとか言ったら今の二の舞だぞ?」


 美人どころの多いエルフを奴隷にしてハーレム作ってやりたい放題なんて、ゲームだからこそできることではあるし。俺も男だ、興味がないとは言わない。


「そうしたいと、あなたが思うようには思えませんが」

「信頼、信用しすぎだなそれは。ずっと言っているように俺の目的が、キミを利用してエルフたちを無茶苦茶にしてやりたいとかだったら、キミは王女としてどう責任を取るんだよ」


 俺とリュールの間に積み重ねは存在しない。

 ここまでの道中で信用されたなんて説得力が薄すぎるし、本筋としてゲームで提供されたら俺はコントローラーをぶん投げる自信がある。


「で、すが……それでもっ!」

「力が必要だ、それはわかる。少なくともキミは今、俺よりも遥かに弱い。実感したその時目の前に利用できそうな力があれば手を伸ばしたくなることすらも、弱い行動だと言える」


 平たく言えば考えなしだなお前って話である。

 ゲームキャラに何真面目に語ってんの? なんて冷静な部分が囁くけれども。


 これは設定との戦いだ、デバッガーとして真面目にもなる。


「……あなたが希望する、エルフに対する欲求を、全て私が担いますと言っても?」

「話にならない。確かにキミは美しく希少な髪を持つエルフだ。だが、俺にとってそれ以上の価値を持つ存在が現れた時どうするつもりだ」


 あるいは、サークルメンバーとして仲間が暴走気味に思い付きを実行しようとするのを食い止めてる場面かな。


 ……そう思ったらちょっと楽しくなってきたかもしれない。


「あなたは……いいえ、あなたも他の種族と同じように、エルフのこと、を?」

「誤解しないでほしいな。俺はこの世界に存在するすべてに同じ種の感情を向けている。仮にこの世界で迫害されているのがエルフではない別の種族で、その長が同じように訴えかけても答えは変わらない」


 全ては設定のままに。

 そこをどう思うか、どう変えるかは主人公の手に委ねられている部分である。


「……」


 俺の答えになっていない答えを聞いてリュールは黙り込んだ。

 所詮ゲームのキャラだと思う気持ちに変わりはないけれど、仕様外のことだけに若干心が痛む。


 なぁ未来ちゃん、どういう意図でこのイベントを仕込んだ?

 ここで俺がキミのイベントを台無しにするデウス・エクス・マキナとなることを望んでいるのか?

 それともリュールというキャラクターに自分を重ねた? メアリー・スーしちゃった?


 そういうところだぞ、このヤロウめ。


「焦るなよ、リュール・ハルネスト・エリフォセル。キミの望みはある意味とても正しく、当然のものだ。それだけに、力ある者ではなく、夢へと本気で共感してくれる存在を欲し待つべきだ」


 未来ちゃん、俺はキミの作る話が結構好きだ。

 フォルトゥリアのラストがどんなものになるのか、なったのか。すごい楽しみにしてたんだ。

 好きだからこそ、物語に俺みたいな不純物を加えてダメな方向に行きそうになるのがイヤで仕方ない。


 ……あぁ、だからか。

 だからこれはキミの甘えか。


「自信を持てよ、リュール、精一杯強がって虚勢を張れ。俺なんぞに頼らずとも、キミの望みはキミ自身が叶えられるはずだ。一人では難しくとも、必ずキミに賛同する仲間が現れる。だからそんな奴が現れた時に言ってやれ、別に一人でもできたけど! ってな」


 これが俺の答えだよ、未来ちゃん。

 やっぱりこのリュールは俺の肌に合わねぇわ、皆で相談して決めたリュールが良い。


「……ありがとう、ございます」

「違うな」

「え?」


 そうとも、古き良きツンデレでいいじゃん。

 流行がどうのとか気にしなくてもいい、フォルトゥリアでのリュールは高慢ツンデレエルフ、それが一番マッチしているよ。


「別に、嬉しくなんかないんだからね! こうだよ、こう」

「ふ、ふふふ」

「ついでに腰に両手をあててふんぞり返りながら言えればベストかな」


 皆に受けなくていい、俺たちの好きを詰め込もう。


 忘れたとは言わせねぇぞ?


「べ――」

「べ?」

「別に! 嬉しくなんか、ないんだからねっ! ……こ、こう、でしょうか?」

「よぉし、グッドだ。最高だよ、リュール」


 そういって二人で笑った瞬間その時に。


「あ――」


 リュールの目から光が消えて。


「……ロールバック、するか」


 訪れた管理者の世界で、どうしてか少しだけ勿体ないと思いながら、このバグの原因であるクリスタル……すなわちイベント設置ミスを修正した。

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