花の香りはそのままに
ソラ
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににおいける
僕は紀貫之。
情報が全然入って来ないド田舎で生まれ育った僕だけど、たまに入ってくる和歌集を読んで、都会に憧れを持ったんだ。
そして、大人になったら大都市、京都で暮らすっていうのが昔からの僕の夢。
そんな夢も叶って、今、京都で暮らしている。
はじめは、知らないことばかりで楽しかった。
だけど、3年も京都で暮らしていると、だんだんつまらなくなってきた。
なぜだろう。
そんなことを考えながらぶらぶらと道を歩いていると、どこからか梅の花の匂いがした。
あぁ。懐かしいなぁ。
父さん、母さん、元気かなぁ。
そう思うと、僕は帰らずにはいられなかった。
実家に入ろうとしたとき、僕は首をかしげた。
なぜこんなに静かなんだ?
すると、隣のおばさんが声をかけてきた。
「あらまぁ、貫之ちゃん。帰ってきてたのねぇ。」
「あの、おばさん、父さんと母さんは」
「2年くらい前に病気で。。。
ふたりとも貫之ちゃんは都会で頑張っているから知らせないでって。
貫之ちゃんのこと、とっても大切に思っていたのよ。」
そのとき、春の風が吹き、梅の花の匂いが広がった。
3年前、父さんと母さんに見送ってもらったときと同じ匂いだった。
涙が溢れてきた。
僕は父さんと母さんに手紙を書いた。
人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににおいける
この歌が有名になることは、このときの僕はまだ知らない。
花の香りはそのままに ソラ @9ro_ba_7020
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます