ボクの異世界メモ❷

ボクの異世界メモ2


(体と、気持ちのこと。たぶん大事)


書くか、

迷った。


書かない方が、

楽だから。


でも、

書かないと

なかったことに

してしまいそうで。


それは、

もっと嫌だ。



最近、

体が変だ。


「変だ」というより、

変じゃなさすぎる。


これが、

正しい言い方かもしれない。


喉は、

乾かない。


正確には、

乾くことはあるけど、

耐えられる。


水があれば飲むし、

味も分かる。


でも、

欲しい、という感覚が

弱い。


お腹も同じ。


時間が来れば、

食事は出る。


食べれば、

美味しい。


でも、

空腹が

主張してこない。


前みたいに、

思考を邪魔するほど

じゃない。


疲れも、

そう。


立ちっぱなしなら

一応だるい。


緊張すれば、

肩もこる。


でも、

少し休めば戻る。


完全に。


引きずらない。


前のボクなら、

ありえなかった。


少し無理しただけで、

次の日まで

全部持ち越してた。


気分も、

体調も。


今は、

切り離されてる。


気持ちは揺れるのに、

体は静か。


これが、

すごく楽で。


……すごく、

怖い。



時間の感覚も、

おかしい。


一日が、

短い。


でも、

薄くない。


朝が来て、

座って、

話して、

本を見て。


気づいたら夜。


「何もしてない」

気がするのに、

ちゃんと

一日が終わってる。


しかも、

疲労が残らない。


これ、

普通じゃない。


でも、

誰も疑問に思ってない。


むしろ、

「天使様は

 お健やかで」

って言われる。


……健やか。


確かに、

そうかもしれない。


でも。


健やかって、

欲求が減ること

だったっけ。


人間って、

もっと

うるさかったはずだ。



あの日。


王城から、

国民に向けて

言葉を出した日。


正直、

何を言ったか

全部は覚えてない。


考えたことを、

そのまま言った。


戦え、

とは言わなかった。


勝て、

とも言わなかった。


ただ、

なくなってほしくない

って言った。


文化とか、

生活とか。


それだけ。


なのに。


みんな、

ちゃんと聞いてた。


誤解も、

盛りも、

なかった。


……初めてかもしれない。


言葉が、

言葉として

受け取られたの。


そのあと。


体が、

ふっと軽くなって。


離れていって。


戻れなくなりかけて。


……あれ。


思い返すと、

笑えない。


でも。


下の人たちは、

安心した顔をしてた。


天使が、

見守っている。


そう

思ったらしい。


違う。


偶然だ。


慣れてないだけだ。


でも。


否定しなかった。


否定、

できなかった。



ここに来てから、

ボクは

ずるい。


何も言ってないのに、

意味を持たされて。


何もしてないのに、

感謝されて。


装いと、

距離と、

沈黙だけで。


信仰、

って言葉が

よぎる。


それが、

ボクに

何かを

与えてる。


体も、

気持ちも。


支えられてる。


……依存、

かもしれない。


でも。


こんなふうに

存在を

認められたの、

初めてだ。


価値がある、

って言われなくても。


ここにいていい、

って扱われるの。


それだけで、

心が

少しずつ

変わっていく。


それが、

怖い。


でも、

嬉しい。



最近、

欲しいものが

減ってきてる。


服は、

相変わらず好き。


文化も、

見ていたい。


でも。


「外に出たい」とか。

「誰かに会いたい」とか。


そういう

衝動が

薄い。


与えられているから。


安全も。

居場所も。

意味も。


最初から、

揃ってる。


だから、

欲しがらなくていい。


……それって。


人として、

どうなんだろう。


でも、

天使なら。


天使って、

欲しがらない

存在なのかもしれない。



それでも。


このまま、

全部

受け取っていいのか。


考える。


答えは、

出ない。


出せない。


でも。


騙し続けるのも、

嫌だ。


かといって、

打ち明けることも

できない。


だから。


何か、

できることを

探す。


せめて。


無理なことは、

引き受けない。


それだけは、

決めてる。



この体は、

確実に

変わっている。


良い方向か、

悪い方向か。


まだ、

分からない。


でも。


戻れない

気はする。


それだけは、

はっきりしてる。


……書いてて、

重い。


でも。


書いた。


消さない。


ボクが

ここにいて、

こう感じていた

証拠だから。


次に書くとき、

どうなってるかは

分からない。


でも。


少なくとも今は。


元気すぎる体と、

揺れてる心で。


ここにいる。


──ここまで。


しばらく、

このメモは

閉じる。


続きを書くかは、

その時のボクに

任せる。



─────────────────────


※補足

本作に登場する「ボク」のイメージ画を、

近況ノートにて掲載しています。

第一章時点での姿を簡単にまとめたものなので、よければそちらもご覧ください。

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