01 闇にうごめくものたち

 ウオオオ

 グオオオオオオ

 アアアアア⋯⋯


 それはおぞましき呻き声であった。

 それは喜悦と憤怒の入り混じった、邪悪な感情であった。


 ゆらゆら

 ゆらり


 青い炎が、揺れている。

 一、二⋯⋯三つの炎が、闇の中で揺れる、暴れる、踊る。


 軽い。

 身が、軽い。

 三体はみな、我が身の軽さを感じていた。

 さもあろう。

 忌々しいあの男の、気配が消えたのだ。

 長きの間、どっしりとした重圧で微塵も動くことができなかったのに、すっかりと解放されていた。


『くたばったかぁ?』


 闇に浮かぶ炎の一つ。

 少年の声である。


『むう、生きているならば八つ裂きにし、死したならば家族を食い殺す。いずれにせよ、末代を滅ぼさん』


 闇に浮かぶ炎の一つ。

 重厚な言葉使いの、低く震える声である。


『我々に汚泥をすすらせた小癪な男、一族もろとも永久に呪われるがいい』


 闇に浮かぶ炎の一つ。

 気怠げな少女の声であった。


 ハハハハハハハハハ

 ハハハハハハハ

 ハハハハハハハハハハハハ


 三体は不意に激しく、けたたましく、大笑いするのである。


『頭をもぎ取って、城門にでも晒してやる』

『魂はこの獄炎へと放り込み、こんがり炙ってから食ろうてくれるわ』

『恨み晴らさでおくものか』


 ハハハハハハハハハハ

 ハハハハハハハ

 ハハハハハハハハハハ

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