孤独の飼い犬

桐谷ふるの

醜い世界

私、世界が大好きなの。  

誰も私のことなんて見向きもしない、  

そんな世界が。  


みんな自分中心で回ってる。  

揺るぎない。  


人には人の動く理由がある。  

でもそれは、他人には関係ない。  


川が流れゆくような人混みで、  

誰かが止まっても、  

誰もその理由に目を向けない。  


当たり前だもの。  

世界は自分を中心に回ってる。  


醜い。  

醜いね。  


だから、私はそんな世界が大好きなの。  


──でも、  

あなただけは違う。  


名探偵のあなたが、  

たった一人、私を眺めてくれたから。  


誰も見向きもしない世界の中で、  

あなただけが、私を見つけた。  


ね?  

だから、愚かなままでいて。  


そのままのあなたが、  

大好きなの。  


あなたが愚かしいほど、  

私の魅力は、あなたの中で  

最大化するから。  


ずっと、  

私だけを見て。  

ずっと、  

謎のままの私を、追いかけて。


ねぇ、愚かで素敵な名探偵さん。  

もしよければ、その愚鈍な頭で、  

私の謎を解いてみない?  


きっと、不思議な答えに  

出くわすと思うから。



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