第3話 彼女の事情


「さぁ、お腹も一杯になった事だし寝ますか……」


「何から何まで本当にすまない……それじゃ、毛布でも貸してくれれば……」


「遠慮する事ないよ? ベッドは小さいけど詰めれば二人眠れるし、それに人肌恋しくない?」


そう言うと、彼女は灯りを消すと、着ていた服を脱ぎ捨て、下着姿になり、ベッドに潜り込み俺に手招きをした。


ベッドに横たわった、なおの赤いブラとパンティがやけにセクシーに見える。


「その……いいのか」


久しぶりに見る女性の肌はいつも以上に悩ましく、つい体が反応する。


だが、王子としての誇りが、僅かに理性を保ち少しだけ抵抗を見せた。


立ちすくんで居ると……


「ほうら、嫌な事忘れるのにはSEXが一番だよ……私から誘っているんだから、遠慮なんてしないで良いんだからね……」


そう言うと、なおはベッドから抜け出し、俺の首に手を回してきた。


そして……「うんぐっちゅっ」


唇を貪るようなキスをしてきた。


「これでも顏にもスタイルにも自信はあるんだけど? 私相手じゃ嫌かな?」


久々に触れた女性の肌と唇の甘い感触。


「そんな事はない……凄く美人だし可愛いと思うよ……」


「そう、それなら良かったわ……」


なおの瞳が潤んできて妖しく見える。


気のせいか息もあらい。


俺は力強くなおを抱きしめ覆いかぶさった。


「なお……」


「私は何処にも逃げたりしないから、安心して……もう少し力を抜いて優しくして欲しいな……」


そう言いながらなおが微笑んでくる。


『寂しい』俺の心の底を見透かされた気がした。


王子の時ならいざ知らず、今の浮浪者同然の俺にどうしてこうも良くしてくれるのか分からない。


だが、この誘惑に勝てる訳もなく俺はなおを貪るように求め、渇いた心と寂しさを埋めるように激しく抱いた。


◆◆◆


どの位、彼女を抱いていたのだろう……結構な時間が経っている気がする。


気がついたら眠ってしまったようだ。


横を見ると俺の腕の中になおが居た。


「どう、満足した? まぁ、私みたいな美女を抱いたんだからそりゃ満足だよね?」


そう言うとなおは俺の顔を見つめニヤリと笑った。


「だけど……そのなんで此処までしてくれる」


「会った時のレオンがまるで棄てられた子犬みたいに寂しそうだったからかな……言っておくけど、誰にでもこんな事なんてしないよ? 私と同じで凄く寂しそうに思えたから……」


「そうか……そう見えたのなら、否定はしないよ! 自分でも気づいて無かったけど、そうだったみたいだ」


「だけど、それは半分、私も色々な事があってもう世の中が嫌になって……まぁ転落の人生を歩んできたわけよ。寂しいのは私も同じ……そんな時、私の好みの男性が寂しそうにしていたからつい拾っちゃった、そんな感じかな……」


「拾ったね……」


「うん……そう……凄い美形の男性が落ちていたから拾ったのよ」


「まぁ、それは良いとして……俺と違ってなおはそんな寂しい生活を送るように見えない、寧ろ孤独とは縁が無いように見えるけど……」


「そうね、これでも元人気アイドルだから、本来はモテるのよ……だけど、色々とあって、私今、凄く嫌われているから……」


そういうと、なおの目には涙が浮かび、それに耐えるかのように目を伏せた。


「え~と……」


「どうせ、そのうち耳にするから話すね……」


そう言うとなおは、ぽつりぽつりと話し始めた。


なおには両親は居なくて施設で育ったそうだ。


そんな、なおの夢はアイドルになる事で中学を卒業後、アルバイトしながらプロダクションに所属しレッスンを受け頑張った。


その努力が実り、夢が叶いテレビで活躍するようなアイドルになれた。


そこまでは良かったが、施設育ちで親が居ないからとかなり不利な契約を結ばれ低賃金で働き詰めの毎日を送らされ、寝る間もなく働いていたそうだ。


アイドルという仕事が好きだったなおはそれすらも気にならなかった。


だが、問題なのは親が居ないと言う事と、所属しているプロダクションが小さい事もあり、プロデューサーや俳優などの業界人がなおに群がる様に口説いてきた。



それを上手く躱していたら……それが気にいらなかったのか、施設育ちだと暴露され……お金が無いからアイドルになる前は売春をしていたとか、悪い友達が居て麻薬をやっていたとか風評を広められていった。


その結果……芸能界に居場所が無くなり引退した。


そんな話だった。


完全には分からないが、彼女が辛い生活を送っているのだけは分かった。


だが……


「余り貧窮しているように思えないが……」


この世界の事は良く分からないが、この部屋はかなり豪華に思えた。


「あっ、それ聞いちゃうんだ……まぁ、話して置いた方が良いよね……私、AVに出たから……」


「AV?」


AVってなんだ……


「分からないか…….そのエッチな画像を記録して売るの、芸能界に居場所が無くなってお金が無くてね……元芸能人って事で最初の1本目の契約が2億円、二本目が過激な内容で1億5千万 3本目が1億円……どうせ落ちるなら、落ちるだけ落ちて金に変えちゃおうって……3本だけやるって決めたの……だから、お金には困って無いの……今はね…….あははっ軽蔑した?」


「AVと言う物がどんな物か知らないけど、俺の居た世界でもお金が無ければ奴隷になったり、娼婦になる人間もいる。俺は勇者に嫌われた結果スラムに流れていき浮浪者に近い生活を送っていたから、気にならない」


「そう、レオンが気にならないなら、いいわ……それじゃ、もう少し楽しもうか? 私、SEXに楽しい思い出がないから、レオンで上書きしたいのよ……駄目かな?」


「いや、駄目じゃない……寧ろ……うんぐっ」


なおは俺にキスをしてきた。


唇と唇の間を涎の糸でつながっているのが、妙にエロい。


「言葉はいらないわ……今は私に集中して」


結局、その日は食事もとらず、夜までベッドから出る事は無かった。






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