第27話 コンティニュー? YES/NO

 ◇◇◇◇


 TIPS あなた達の違和感は正しい

 TIPS ここに至るまでの桃無楽人の活躍への違和感

 TIPS それはきっと正しい


 ◇◇◇◇


「『あ、はあ』」


「……ごふッ」


 バケモノが腕を伸ばす。

 燃え盛るノコギリ状の腕が俺の胸元をベッドごと貫いていた。


 一撃で理解する。

 あ、これ助からねえ。

 激痛による悲鳴を上げようとすると、声の代わりに血を吐き出していた。


「あ、あああああ!? お前!? ああ、そんな、そんなあああ! ラクヒト!! すぐに! すぐにむんと契約するムン!! やだああああ! ムンチョ、お前が死ぬの嫌だムン!」


 ムンチョ? どうしたんだ、お前。

 泣いてるのか?

 ああ、そうか、俺が刺されたから……。


「……げい、や、ぐ?」


 声が、上手く、出ない……。


「そうムン! 契約ムン!! ムンチョと契約して魔術師になるムン! 保障するムン! お前が魔術師になればあんな魔獣、相手にならないムン!」


 もう、怪しんでいる暇はない……!

 ムンチョ、契約、を――。


「分かったムン! それじゃ、ムンチョと一緒に契約詠唱を結ぶムン! ”穿て――我ら血を結び獣に抗――」「『け、もの』」


「むゅ””」

「え」


 ジュワッ。

 ムンチョが、消えた。

 化け物の顔が一瞬輝き、光線のような何かがムンチョに向けて射出。

 一瞬だった。

 あの奇妙で、怪しくて――でも悪い奴じゃなかった生き物が。蒸発して死んだ。


「……ムンチョ?」


 蒸発して死んだ。


【戦略分岐点① ”端末妖精との契約失敗”を確認】


「『け、ものが、り。けものがり、けものがり。けものがり』」


 化け物が、ムンチョを殺した。


 なんだ、これは。

 一体、何が起きている。

 ムンチョが、死んだのか? こんな、あっさり?


「て、め、よくも、むんちょを、ぐふ、ぶ」


 呼吸が出来ない。

 視界が、暗い。意識が、飛びそうだ。


 化け物が俺の胸を貫いたまま近くに。

 化け物が俺を見下ろす。

 化け物の顔、太陽の容をした光が薄くなる。


 ぐばり、ジッパーが開くように、化け物の顔が開く。

 化け物の素顔が、見えた。


「『……なさい』」


 ……ああ、クソ。

 そうか、そういう事か、山味。


 ――すまないが、彼女を殺してあげてくれ。


 そういう、事かよ。


「『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。負けてごめんなさい、負けた負けた負けた負けた負けた負けた――』」


 化け物の中には、夜行ユキがいた。

 うつろな瞳から涙を流す、俺の魔法少女。

 その敗北の姿、末路。


【戦略分岐点② ”夜行ユキの早期敗北”を確認】


「夜行……さん?」

「『あ。なた? あ、え? なんで、血を、流してる、の? どうして、ケガを……え? え?』」


 夜行さんが気付く。

 自らの変質した腕、燃える鋸と化したその腕が俺の心臓を貫いている事を。


「『あ、あ、ああああ、あ、ああああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、嫌、嫌ァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』」


 そして、最悪は更新される。


「センセイ!!!!!!!」

「相棒!!!!!!!!!!!!!」


 ボン!!!!!

 病室の壁が美しく切り裂かれる。

 夜風と共に病室に現れたのは、俺の魔法少女達。


 鳳翔院ホノカと、水無瀬ツルギも、また。


「「あ」」


 俺の心臓を夜行ユキが貫いているのを目視した。


「『……シテ』」

「『コ……テ』」


 か細い声が続く。

 夜行ユキの声だ。

 ああ、クソ……。

 この消えそうな声、原作の鬱曇らせBADエンド”夜行やこうき列車”の時と同じ声。


 そうだ、あのEND。

 エンディング後、主人公の死を己のせいだと思い詰めた彼女。夜に消えていく夜行ユキの最期のセリフと同じ――。


「『――ころ、して』」


「ァァあああああああああああああああ、センセええええええええええええええええええええええええええええええええええ、嫌ァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


「嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だあああああああああああああああああああ。相棒、ァ嗚呼あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 ……俺は、どこで間違えた?

 カグヤヒメ作戦を、命がけでBBBをクリアした末路が、これ?


 俺の魔法少女が、泣いている。

 夜行ユキが、鳳翔院ホノカが、水無瀬ツルギが皆、泣いている。


「『ころ、して。ホノカ、ツルギ、あああ、お願い、ころ、して』」


「ああ、なんで、なんで、なんでえええええええええええええええ。なんで、こんな事になるの、私が、護れなかったから、ああああああああああああああ」


「僕は役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず役立たず、うわああ、わああああああ」


 ずるりゅ。

 胸を引き裂きながら、夜行さんのノコギリが引き抜かれる。

 そのまま俺は折りたたまれるようにベッドに寝転がるしか出来ない。


 夜行ユキと、魔女が向かい合う。


 病室に炎が広がる。

 慟哭と叫びが広がる空間の中、何も出来ない俺の前で最悪が始まる。

 涙を流し、叫び、嗚咽し。


 それでも、少女達は――人類の守護者だった。


「――焼却の魔女……鳳翔院ホノカ」

「――光刀の魔女……水無瀬ツルギ」


「「魔獣、討伐を、開始」」


 俺の魔法少女が殺し合っている。

 俺はそれを死にながらずっと見つめているだけ。


 なんだ、この光景。

 俺は、こんなものを見る為に、ここまで生きてきたのか?

 なんだ、この終わり。

 俺は、なんのためにここまで来たんだ?


 夜行ユキの燃え盛る鋸が、鳳翔院ホノカの焔を引き裂く。

 夜行ユキの燃え盛る鋸が、水無瀬ツルギの光刀を砕く。


「センセイ、ごめん、ね……」

「あい、ぼう……僕は、今度、こそ、君を」


 逃げてくれ。

 もうそんな言葉すら、出ない。

 目の前が、真っ暗になる。

 痛みも、熱さも何も感じない。


 俺の魔法少女達が、泣きながら殺し合っている。

 違うだろ、オイ。


「……――ねえ」


 ムンチョは死体すら残せず死んだ。


「――とめ、ねえ」


 殺し合いを続ける魔法少女達。

 全てを炎が包んで――。


「こんな、終わり方――絶対に、認めねえ」


 ぐらり、天井が崩れる。

 俺が最後に聞いたものは、自分を潰す瓦礫の音。

 俺が最後に見たものは――2人の魔法少女の死体を見下ろし――。


「『あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああ』」


 泣き続ける俺の魔法少女の姿だった。


 俺は――絶対に――。


「こんなの、認めねえ」


 手を伸ばす。

 届くハズもない手を。


「『だれ、か、おねがい』」


「俺が絶対に、全部、全部――」


「『ころ、して』」


 伸ばした手を、何かが潰す。

 ああ、瓦礫だ。

 最後に聞いたものは、自分を潰す瓦礫の音。




【キャプテン桃無楽人の死亡を確認】

【臨界点を起因に世界線の再構成を開始】

【その間、今回の世界線のその後を見て欲しい】



 戦闘結果報告


 西暦2038年11月26日の夜。人類は太陽の獣に敗北した。


 対ダンジョン防衛都市は一夜にして壊滅。

 夜行ユキ――改め、”鋸と銃の獣”によって、魔女会、探索者その9割が死亡。


 僅かに残った超人達は、第二首都大阪に総力を結集、太陽の獣、及びその眷属獣である”鋸と銃の獣”への反抗作戦を開始するも失敗。

 日本の保有する戦力は底を尽きる。


 その後、太陽の獣と”鋸と銃の獣”との戦闘が開始。

 鋸と銃の獣は完全吸収され――太陽の獣による地球侵略が開始。

 3日で、人類は人口の9割を喪う。

 人類の歴史は、終了した。


 BBB第二部 完






【それはだめ、認めない】

【世界線の修復完了】

【再構成の開始】




 ◇◇◇◇



 気付けば、俺は闇の中にいた。

 深く広く――何もすることがない、

 俺は、この闇を知っている。


 カグヤヒメ作戦、いや、もっと昔に見た事がある。


 ここは――宇宙……?


【おお。キャプテン。死んでしまうとは何事か】


 声がした。

 まばゆく輝く――銀髪の女。

 驚愕や疑問よりも先に女が口を開く。


【……こほん。やはり反応が悪い。TPOをわきまえていないコミュニケーションと判断、以降は修正していく】


 女は咳払いを1つ。

 そして再び口を開く。

 

【貴方とのコミュニケーションに余分なものは必要ないと判断。故にもはや定型となったいつものやりとりを履行する】


 俺の意思など知らぬと言わんばかりに、平坦な口調のままで――。

 

 驚愕の言葉を。


【端的に言う】


【私はあなたと同じ。バッドエンドを憎み、ハッピーエンドを好む者】


【貴方をこれから、西20381126の昼間、全てが終わる寸前まで戻す】


【貴方は全ての選択に最適解を取り、太陽のバッドエンドを殺してほしい】


【故に、いつものように私は貴方に問うだけ】


 女が銀髪ロング眼鏡の凄い美人が、こてんと首を傾げた。


コンテニュー?全部救え




 ~あとがき~

 ここまで読んで頂きありがとうございました。

 もうストレス回終わりです。きつい話に付き合って頂きありがとうございました。

 明日からは上がり続ける事をお約束いたします。


 桃無が今までやってきたことを読者の方にも体験して頂きたかったのでこのような構成になりました。

 今までコメント欄でも数人の方が感じていた違和感や謎がここから一気に回収されていきます。


 読者様に一点お願いです。

 もしまだ☆評価していなければ↓の☆を3回押して評価していただけないでしょうか?

 最高潮の盛り上がりは次回以降ですが、ここから一気に盛り上がり総合1位を目指したいと思います。

 ここまで付き合って貰った読者様には絶対に後悔させないのぜひよろしくお願いします!

 じゃ、また明日!

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