自己犠牲エンドから生還した。嫌われ演技バレしたせいで病んだヒロイン達が曇りながらお世話してくるのをやめさせたい~「全部捧げて、償うから……」自責系魔法少女と異世界勇者の看病が重すぎる~
第22話 水無瀬ツルギ視点:僕の英雄を助けなきゃ その1
第22話 水無瀬ツルギ視点:僕の英雄を助けなきゃ その1
◇◇◇◇
生まれた時から、ヒーローになりたかった。
きっかけは覚えていない。でも皆、幼い頃はヒーローになりたくなるだろう?
小さい子は、皆、自分の顔を他人に分け与える穀物とあんこのヒーローが大好きだ。
僕、水名瀬ツルギもきっと、そんな風に誰もが幼い頃に抱くヒーローへの憧れを当たり前に持つだけの子供だった。
唯一、僕が他の人と違う所があるとすれば……。
背が伸び、胸が膨らみ、周りの女子達がアイドルや芸能人、推しの配信者の話ばかりするようになった時になってもまだ、ヒーローへの憧れを持ち続けていた事だろうか。
だって仕方ないじゃないか。
僕の生きるこの世界には、ヒーローがいたんだ。
魔法少女。
超人的な力に目覚め、魔獣と戦う英雄達。
毎日テレビやネットで彼女達の活躍を見る度、僕は羨ましくてたまらなかった。
4か月に1回は必ず献血に行って魔力測定の項目にサインをしていた。
僕の生まれたこの世界は、憧れは手を伸ばしても届かないのに、諦めるには身近すぎだ。
いっそ、ヒーローなんて、魔法少女なんていなければこんなに苦しむ事はなかった。
ヒーローになる為の準備もたくさんした。
身体を鍛え、本を読み、寝る前は毎日イメージトレーニング。
学校、街、家。
妄想の中の僕は、日常を突然破壊し現れる魔獣から人を助ける、勇気あるヒーローそのものだった。
自分を主役にした小説をネットに上げたのは、やりすぎたかもしれないけど。
家族は暖かい、良い人達だ。
僕に、夢や憧れを諦めろなんて直接言う事はなかった。
でも、父や母に時折……少し困ったような顔をさせてしまうのが辛かった。
人間は集団において、異物を排除する仕組みがある。
いつまでたっても幼い憧れを捨てられない僕は、学校に居場所はなかった。
でも、愚かな僕は信じてたんだ。
きっと、僕はヒーローになれる。
今は、そのチャンスが来ていないだけ。
ヒーローなら誰でも経験する、冬の時代。準備期間。
ヒーローの物語をたくさん読んでいる僕には全部分かっていた。
ヒーローになれるチャンスは突然訪れた。
今でも、覚えている。
修学旅行の自由時間だった。
ギリギリまで行くかどうか迷った僕は、当たり前のように自由行動の日に、いつのまにか1人になっていた。
一緒に行動していたはずのクラスメイト達はいつのまにか消えていた。
彼女達を責める事なんて出来ない。
想い出づくりは誰だって友達同士でやりたいものだ。
悲しくなんてない。
辛くなんてない。
だって僕には夢と憧れがある。
修学旅行の日は――肌寒い秋だった。
僕は観光地になっている有名な神社のベンチで1人――コンビニで買ったお弁当を食べていた。
『ぷちぐみがすき』
魔獣。
空にゲートが開き、手足の生えた魚の魔獣が現れた。
観光地に押し寄せていた人々の悲鳴、逃げ惑う人々、それを見て嗤う魔獣。
逃げ惑う人々の中に、僕と同じ制服に身を包んだ女子達がいた。
同じ班のクラスメイトだ。
魔獣がその子達に目をつける。
腰を抜かし、涙を流しながら命乞いをするクラスメイト。
『ぷちぐみがいた』
魔獣が、クラスメイト達に手を伸ばす。
放っておけば、彼女達は魔獣に食べられてしまうだろう。
運命が、僕に用意してくれた。
ヒーローになれるチャンス。
さあ、水名瀬ツルギ、今だ。
今までの全ては、ヒーローにはよくある準備期間だったんだ。
暗く辛い時代を過ごした僕は、これからヒーローとしての輝かしい未来を歩む。
これはその第一歩。
さあ、動け、さあ、前へ。
全ての準備はこの一歩の為に。
毎日のトレーニングも、たくさん読んだヒーローの物語も、寝る前のイメージトレーニングも全部、この時の為なんだって。
さあ、前へ。一歩前へ。
プラトンもデカルトもカントもニーチェも全部読んだ。
ヒーローはそうした知識も必要だからね。
彼らが言う事は一貫している。
ヒーローとは、超越し、助ける者なのだと。
僕を撒いて、僕を置き去りにして、僕の教科書を隠して、僕の机に落書きをして、僕のシューズを捨てて、僕の机に花瓶を置いて、僕が1人で京都の町を歩いているのを写真に撮って独りぼっちと晒した子達を助けなきゃ。
僕の、僕の、僕の全てをバカにして踏み躙っている子達を助けなきゃ。
そしたら助けた彼女達に、なんで助けたのって聞かれたらこう言うんだ。
――体が勝手に動いていたってさ。
ねえ、だからさ。
動け、動け、動けよ、僕。
おかしいだろ、どうして、どうして。
『助けて――』
ほら、いじめっこ達が僕に助けを求めてる。
助けなきゃ。
だって、ヒーローは、どんな嫌な奴でも絶対に助けちゃうんだから。
なんで、僕は一歩も動けないんだろう。
ヒーローなのに。
ヒーローになりたいのに。
魔獣が怖くて、でも、それよりも人が怖くて。
動けない。
あ、魔獣が、いじめっこ達の身体を掴んだ――。
『あれ』
僕は、なんで、一歩も動けないんだろうか。
僕は、なんで――
『ははっ』
ちょっと嗤って。
『休暇中にィィ、仕事を増やすんじゃねええええええええええええええ!!! 殺すぞォォォォォォォォォ』
大きな声、大きな声が響いた。
薪割り斧を担いだスーツの男の人。
~あとがき~
昨日お休みして申し訳ありませんでした。
おかげさまで締切を守る事が出来ました。
明日は昨日のお休み分含め、2回更新の予定です。
引き続きお楽しみ下さい。
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