第2話
少年が導いた住処は、街の喧騒から切り離された、静かな雑木林の中に佇む小さな小屋だった。扉を開けると、そこには湿った路地裏には存在しない「安らぎ」が満ちていた。木々が放つ瑞々しく優しい香りと、暖炉で爆ぜる薪のパチパチという音。オレンジ色の炎が壁を柔らかく照らしている。シュナにとって、雨風をしのげる屋根の下は、それだけでお伽話の中の聖域のように思えた。
「僕のお姉さんになってくれるなら、ここにずっと住んでいいからね」
暖炉の火を見つめたまま、少年はあまりに淡々と、けれど重みのある提案を口にした。
「・・・なんで、私なんかに優しくするの」
シュナのかすれた問いに、少年は色素の薄い瞳をゆっくりと向けた。
「僕、家族がいないんだ。お姉さん・・・死んだ僕の姉さんに、すごく似てたから」
その声には悲しみさえ凍りついたような静寂があった。
少年の名は、レイ・フリード。
彼は火事で家族のすべてを失ったのだという。今は自らの氷魔法で生み出した氷を売り、その日銭を糧に一人で生き延びていた。「スキルがあれば、体を売らずに生きていける」 その事実は、泥を這うように生きてきたシュナにとって、眩しすぎるほどの羨望の対象だった。
やがて、レイが不器用ながらも温めてくれたシチューがテーブルに出された。温かな湯気が鼻腔をくすぐり、一口ごとに冷え切った内臓が解けていく。腹を満たし、暖炉の熱に包まれるうちに、シュナの意識は急速に混濁していった。緊張の糸が切れ、船を漕ぐように頭が揺れる。
そんな彼女の姿を見て、レイの唇に、薄く、けれど確かな体温を感じさせる微笑が浮かんだ。
「・・・ベッドでゆっくり休むといいよ。気が済むまで、ずっと」
その言葉は、まるで深い雪の中に沈み込んでいくような心地よさでシュナを包み込んだ。「明日になれば追い出されるかもしれない」という恐怖さえ、今は遠い。
シュナは生まれて初めて得た、泥の匂いのしない清潔な眠りの中へと、吸い込まれるように落ちていった。
深いまどろみから覚めたシュナを待っていたのは、安らぎではなく、底知れない違和感だった。寝返りを打とうとした瞬間、硬質な金属がぶつかり合う、無機質な音が静寂を切り裂いた。
手首と足首に食い込む、重く冷たい感触。自由を奪われた四肢は、ベッドの四隅に堅固な手錠で繋ぎ止められていた。絶望に目を見開くシュナの視界に、ゆっくりと少年の影が落ちる。
「あっ・・・」
「シュナ、可愛い・・・寝ていても感じるんだね」
「や、め・・・」
理解が追い付かなかった。ベッドに拘束されていて、私は裸になっていて、そして。その年齢からは想像も出来ない程、いやらしい愛撫が、快感がシュナを襲った。
「ほら、ここはこんなに勃起してる」
「はぁうっ!」
じゅるっ、じゅぅっ・・・わざとらしい音をたてて、レイはシュナの乳房の突起を強く吸った。もう片方の乳房を優しく揉み、蕾をコリコリと硬くさせていく。幼く小さな手、それなのに成人男性のようにいやらしい・・・
まるで悪夢を見ているような、そんな感覚に囚われた。
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