第4話
俺はアレス、英雄と呼ばれることもあるが普通の…いや普通よりちょっと運がいい冒険者だ。
普通の人間の冒険者は20代中盤になると、そろそろ引退が視野に入ってくる。
30になって冒険者を続けてる(続けられる)奴なんて20人いて1人いるかどうかだ。
「俺はこの依頼が終わったら、そろそろ引退しようかと思う」
「それって負けフラグっていうんだよー」
パーティーメンバーのリサが冗談めかして言ってくる。
確かに酒場で言うことじゃ無いかもしれないな
「これは冗談じゃないぞ」
「え⁉︎ マジで?」
「俺も今年で30だ。ここまでは運良く生き残って来たが、知り合いも冒険者を辞めてる奴が多い。ここらが潮時だ。」
「そうか、アレスの魔法が凄すぎて人間ということを忘れていたよ。」
ハーフエルフのリサとはどうしても時間感覚がズレるのだろう。
ただ、俺の場合老化というより単純に「飽きた」という方が正しいかもしれないな。
その日はそのまま流れで解散、次の日の依頼もリサの様子がおかしいこと以外何事もなく終わった。
「今日は様子がおかしいな。そんなに考える依頼じゃなかっただろ。」
「……」
「どうした、まさか俺とのパーティー解散がそんなに嫌なのか?」
「っ、そうに決まってるじゃん!」
リサは本当に怒ると子供っぽくなる。
つまり、いまはめちゃくちゃキレてる。
そう客観的に考えて現実逃避しかけたが、すぐに戻ってくる。
「すまないな。俺は冒険者という仕事に飽きてしまった。このままズルズル続けるのは性に合わないから、丁度30になる年で辞めておきたいんだ。」
「わかってる、わかってるけど寂しいよ」
「すまない」
「謝るな!さっさと行け。偶には顔を見せろよ。」
本当に俺の仲間は理不尽だ。
ただ勘違いは訂正しておこう。
「引退しても多分週に一回は会うことになるぞ。」
「へ?」
「だって俺、この街から歩いて30分の故郷の村に帰るだけだし。」
「……」
「いやー良かったな。会おうと思えば毎日でも会えるぞ!」
そもそも転移魔法を使える時点で距離なんて関係ないしな。
「もう2度と会いたくない。さっさと出ていけ。」
本当に俺の仲間は理不尽だ。
ギルド内で騒ぎ続けてたら邪魔になるし、そろそろ出ていくか。
「私の覚悟は一体なんだったんだ…」
このギルドにもお世話になったな。
狭い受付所、料理がまずい酒場、押し付けられる塩漬けクエスト…
世話になったかなぁ?
最後に微妙な感情になったが、12歳から30歳まで人生の半分以上を過ごした場所に別れを告げるとしよう。
「じゃあまたな、リサ」
「ああ、さっさと行ってこい…」
「今日の夜はちょっと高めの店で打ち上げしようぜ!」
「転移魔法使いをこれほど駆逐してやりたいと思ったのは初めてかもしれない。」
なぜだ。いつもは高めの店に行くと機嫌が治るのに。
—————————————————
俺のその後を大きく帰る出来事は、村に帰って1ヶ月たったころ起きた。
仕事が早く終わり、昼寝をしていた時にドアを乱暴に叩く音がした。
「アレスさん、村長が緊急で話し合いたいって!」
村の悪ガキどものいたずらかと思ったが、そうではなかったようだ。
「捨て子が見つかった。」
「冗談ですよね。」
「冗談だと思うか?」
この村は俺が設備を寄付したとはいえ、まだまだ発展してるとは言いがたい人口400人程度の小さな村だ。
「妊娠してる人がいたらすぐわかるし、わざわざ捨てにくる者も居ないでしょう。」
仮に捨てにくる者がいたとしても、来る時と帰る時で違和感に気づくだろう。
「村の広場に魔術らしきものに包まれて放置されていた。近隣の村や街に連絡してみたが、そもそも子を捨てなければならない程の貧困状況の者はいないらしい。」
ここら辺一帯を治めている公爵様は、貧困を無くすことに力を注いでいるからな。
やる気が少しでもあれば生活はしていけるという、恵まれた環境だ。
噂によると公爵家はメイドも平民出身が半分程度いるそうだ。
貴族としては異端の部類だろうが、税収も増えているらしい。数年もすればまともな貴族は真似しだすだろう。
「捨て子はどうするつもりですか?」
「無論育てたいと思っているが、その前に聖職者向きかどうかだけ調べてほしいと思い君を呼んだ。」
鑑定が使える者は少ないからだろう。聖職者向きのスキルや称号を持っていたら、この村で育てるより、教会で育った方が幸せだろうしな。
「わかりました。見せてもらってもいいですか?」
「この子じゃ」
これが俺の運命を180度変えただけでは飽き足らず、捻じ曲げてきた我が娘ベスティアとの出会いだった。
アレス:
「我が娘ベスティア」これカッコいいよな
魔王:
一人称「我」にするの憧れますよね!
上位魔族ベスティアの勘違い日記 ms @ms1015
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