第2話

七月二十日午前十時二分。

入口が開くのを確認。

二名での来店。

推定三十代前半。No.a241

推定五歳前後。No.I61


「いらっしゃいませ」

「あの、まだ大丈夫ですか?」

「本日の朝食提供時間はまだ過ぎていないため問題ございません」

「よかった。るいくん椅子座れる?」


No.a241 とNo.I61が席につくのを確認。

No.I61の視線の動きから不安が予想される。


提供開始から六秒。

「ママ!これ嫌い!」

「あぁそうね。るいくんは食べられなかったね」

「これも!」

「るいくん、前はこれ食べられたじゃない。どうしてやなの?」

「いやなものはいや!」

フォークに刺されたトマトが床に落ちるのを確認。

店内清掃・消毒の準備が必要。

四秒の間が空きNo.a241の声が響く。

「るいくん!いい加減にして!」

No.I61の体温上昇を確認。涙が流れ出すまでにかかった時間はわずか5秒。

No.I61の泣き声が店内に響く。

清掃・消毒完了。

No.a241の動揺を確認。

「あぁ、あの、ごめんなさい!すぐに片付けます。何か拭くものとか……」

「清掃は既に完了しています」

「え、ほんとだ。すみません私……。大きな声をあげてしまって。すぐに出ますので……」

「まだ全ての摂取が完了していませんがよろしいですか」

No.a241の目が朝食を行き来する。

「るいくん、嫌いなものはままが食べるから。食べられるものだけでも食べて」

No.I61の体温が安定しているのを確認。

提供から五十六分経過。

No.a241 とNo.I61の完食を観測。

「ご迷惑をおかけしてすみませんでした。ごちそうさまでした」

「おにくはおいしかったー」

No.a241 とNo.I61の退店を観測。


七月二十日午前十一時一二分。

本日の来店人数二名。

本日の観測を終了する。





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