第17話 February(17)

「こんにちわー、」



すっかり仲直りしたひなたと奏は学校帰りに奏の母の見舞いに一緒に行った。



母は身体を起こして読書中だった。



「どうですか?」



ひなたが笑顔で聞くと



「来週からリハビリ始めることになったの。 ようやく足以外のところがよくなってきて、」



「そうですかー。 よかった、」



横の椅子に座った。



「・・新しい先生は、どう?」



母は少し心配そうに奏に言った。



「厳しいけど…。 でもすごく一生懸命やってくれる。 ダメなところもバンバン言ってくれるからヘコむけど最近は絶対に次までにちゃんとやろう!って思うし、」



「そう。 でも・・すぐにここに挨拶に来て下さって。 私はすごくいい先生だと思ったわ、」



母はそう言って笑ったが



さくらがどんな思いで母に会いに来たのかと思うだけで、



やっぱり彼女に対してどこまでも頭が下がる気持ちになった。




その後も3人で話は弾んだ。



「そう。 ひなたちゃんの妹は春から中学生になるのね、」



「そうなんですー。 もうお母さんったら近所の卒業生から制服とか貰ったりして、かわいそうに妹は新品を着れないんですよー。 妹は小さいんで、どうせ買い替えるだろうからとか言って。 ひどいでしょ?」



「でも、確かに中学生はすぐに身体が大きくなるから制服は大変なのよ。 お母さん、ちゃんと考えてるのね、」



「そうかなあ・・単なるケチじゃないかと思うんですよ。 よくダイコンの皮とかも干して料理に使ったりしてるし。 皮ですよ???」



ひなたは一方的に話をして



「あ、塾の時間・・。 じゃ、また来ますね。」



と椅子を立って、奏に



「じゃね、」



とにっこり笑ってバイバイをして出て行ってしまった。




「女の子はいいわね。 いるだけで明るくなって、」



奏の母は嬉しそうに笑った。



「ひとりでしゃべっていったな・・」



奏も笑った。



「・・お父さんがあんな大きな会社の取締役もされているおうちなのに。 ご家族みんなお高く留まったところもなくて。 自然で、」



「志藤さんのお父さんもいろいろと気にしてくれて。」



奏は志藤の存在を本当に身に染みてありがたく感じていた。




「ひなたちゃんと・・おつきあいしてるの?」



母はおもむろに訊いてきた。



「や・・。 それはー、」



奏は口ごもった。



「・・なんか。 彼女・・ちょっとかわってるってゆーか、」



「かわってる?」



「ウン。 あんま・・そういうこと深く考えてないっていうか。 その割に・・彼女っぽい風なこと言ってきたりもするし・・」



この前のチョコレート騒動のことを思いだした。



「なにそれ、」



母は笑ってしまった。



「でも。 奏があの子のことを好きって思うのなら。 ずううっと大事にしてあげて欲しい。 そういう男になりなさい、」



もちろん恥ずかしくて母の前では言えなかったが



正直



あんなめんどくさいことが起こっても、何をしても何を言われても



ひなたのことがかわいくてどうしようもなかった。




あたし以外の人、好きにならないで



今は



あの言葉だけでものすごく気持ちが落ち着く。


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