悪夢

黒い霧が立ち込める。

懐かしい匂がする。


宮廷の回廊。


目の前に広がる景色は白黒でどこか霧がかかっている。


隣には’’おまえ’’がいる。

ゆっくりと、でも確実に歩いている。


足が止まった。

’’おまえ’’は俺を追い越して歩いていく。


少しして’’おまえ’’は振り向く。


「そんな顔するな。すぐ戻るさ。」


低い、ざりざりとした声。

屈託ない笑顔で’’おまえ’’は笑った。


風が強くふいた。

その笑顔を霧が覆い尽くす。

手をのばそうとしても体がピクリとも動かない。


霧が濃くなっていく。

音もなくゆっくりと回廊が崩れていく。

周りのすべて崩れていくのに

俺の体は宙に浮いていて、それをただ見ることしかできない。


焦げた血の匂いがした。

黒い霧が黒煙へと変わる。


風が吹く。

黒煙が晴れる。


その中から見知った顔が顔を上げる。

鎧は砕け、顔は血だらけだった。

それでも面影はしっかりとあった。


目は虚ろで、それでもその目はまっすぐ俺の方を向いている。


「…かたき…を、う…て…」


低い、ざりざりとした、

震えていて、今にも壊れてしまいそうな、声。


「…うつ。うつから…。それは誰なんだ…?」


喉から絞り出した声。


その声を聞く前に

’’おまえ’’は倒れる。


その後ろには影がいた。

黒い影。

小さな、影。


真っ黒に塗りつぶされたその目が

俺を見ている。


「おまえが…」


俺はその影に手を伸ばす。


風がふいた。

黒い霧が辺りを覆う。

強風に薙ぎ払われる。


「エリアスーーーー!!!」

強風に行手を阻まれながらも喉を無理やり開けて叫んだ。


次の瞬間、体に激痛が走った。


「ハァハァハァハァハァハァハァハァ…!!!」


目を開けると天井がうつった。

いつもの見慣れた天井。


背中には汗がびっしょり流れていた。


額の汗を拭い、髪をかき上げる。


「また…あの夢か…。」


レオナルドはゆっくりとベッドから起き上がった。

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