第3話 シャッター街に関する記事

宇井里市商店街 相次ぐ閉店 買い物客減少と過去の事件が影落とす

□□新聞 20XX/XX/XX 17:15


 宇井里ういり市中心部にある商店街が、「シャッター街」と化している。かつては日用品を求める買い物客でにぎわった通りも、今では昼間でも人影はまばらだ。


 市内で長年個人商店を営んできた60代の男性は、店を閉めた理由についてこう語る。


「近くに大きいショッピングセンターができてから、商店街に買い物にくる人が減った。駐車場もない個人商店には、なかなか人が来てくれない。仕方なく、店を閉めることになった」


 宇井里市ではここ数十年、郊外型の大型商業施設が増え、車での来店が前提となる買い物スタイルが定着した。一方、商店街周辺には十分な駐車場がなく、高齢の店主を中心に経営の継続を断念するケースが目立っている。


 さらに、商店街の衰退には別の要因もあるという。市内に長く住む50代の男性は、過去の出来事を指摘する。


「あの事件が起きてから、明らかに人が来なくなった。仕方がない。むごい事件だったのに、犯人はいまだに捕まっていない。商店街は怖い場所という印象を持つ人も多いだろう」


 男性の語る「事件」とは、19XX年に発生した殺人事件のことである。現場は、商店街内のリサイクルショップ店だった。店舗2階の自宅部分で、当時店長を務めていた男性が死亡しているのが見つかったのだ。警察は殺人事件として捜査を進めていたが、現在に至るまで犯人は特定されていない。このリサイクルショップは閉鎖され、事件当時のまま現在でも放置されている。


 人口減少や商業構造の変化に加え、過去の未解決事件という負の記憶も抱える宇井里市の商店街。再生への道筋は、依然として見えないままだ。

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