第3部1話 恋人指数の測定開始

付き合ってから数日が経った。

教室の窓から差し込む光の中、私はノートを開き、表を作る。


――恋人指数を測定しよう。


変数は、S=スキンシップ、C=会話の回数、T=思いやりの行動、F=一緒に過ごす時間。

すべて0〜2で評価し、合計で今の親密度を数値化する。


目の前には、私の恋人である綾音がいる。

彼女は机に向かってノートを書きながら、時折私をちらりと見る。

微笑むわけでもなく、かといって冷たいわけでもない。

——この微妙な距離感が、今の恋人指数に表れる。


まずS、スキンシップ。

手を触れる、肩に触れる、軽く手を握る。

今の彼女の反応は「1」、軽く受け入れるけど自然体だ。

S=1。


次にC、会話の回数。

今日の放課後、彼女から話しかけてくれる回数は「1」。

私からの質問には少しだけ戸惑う様子。

C=1。


T、思いやりの行動。

彼女は私のノートを整えるときに、ちらりと気を遣ってくれる。

それも「1」、時々の思いやり。

T=1。


F、一緒に過ごす時間。

今日は短い放課後、図書室で少しだけ一緒に勉強する予定。

短い時間なのでF=0。


――合計は、S+C+T+F=1+1+1+0=3。

恋人指数3。

普通の状態だ。まだ不安定でもなく、安定でもない。


私はノートに数字を記入しながら、綾音の微妙な表情を観察する。

眉のわずかな動き、口元のニュアンス、手の置き方。

——距離は少しある。でも、彼女の心は完全に閉ざされてはいない。


「智鶴、なに書いてるの?」


彼女の声が少しだけ揺れる。

私は微笑みながらノートを閉じる。

「今の私たちの距離を、ちょっと測ってみただけ」


綾音は軽く笑う。

でも、その笑顔は少し照れくさそうで、完全に心を開いてはいない。

——この微妙なすれ違いも、恋人指数に反映されているのだろう。


放課後、廊下を歩きながらも、私は方程式を意識して距離を計算する。

手を軽く肩に触れるか、歩幅を揃えるか、会話のタイミングを調整するか。

すべては恋人指数を少しでも上げるための行動だ。


でも、心の奥では、少しだけ不安がある。

——彼女が本当にこの距離で心を開いてくれるのか。

計算だけでは、答えは出せない。


今日の恋人指数は「3」、普通の状態。

でも、これから少しずつ、彼女との距離を縮める。

S、C、T、Fを少しずつ増やして、安定・親密、そして強い信頼を目指す。


夕日が廊下を赤く染める中、綾音は少しだけ歩幅を私に合わせる。

その小さな変化が、私には大きな一歩に見えた。

——今日の恋人指の測定は、まだ始まったばかりだ。

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