依頼

そんなやり取りをしていると

助けた旅人さんが、こちらにやって来た。


「危ないところを助けて頂き、ありがとうございました。あの、御三方は冒険者でしょうか?」

「えー、まぁ、あの…そうですね、ハイ」


なんと答えようか悩み、フワッとした返事をすると

旅人2人は顔を見合わせ頷いた。


「あの、助けて頂いた上にこんな厚かましいお願いをするのははばかられるのですが、コライ村までの護衛をお願いできませんか?」


と依頼をしてきた。

あからさまに嫌な顔をするヴェールとヴィータを

なだすかし、とりあえず話を聞いてみることにした。


旅人さん達はウィムニスの王都から

派遣されてきた調査員。

所謂いわゆるお役人だ。

自らを、レオとラインと名乗った。


「数カ月前から被害報告が上がっていた案件が2件ありまして、1つがこれから向かう、コライ村の害獣被害。そしてもう1つが奴等…」


彼等は後ろを振り返り、私が骨と心をへし折った

野盗共を指さした。


「アグニア及びコライ村から王都へ向かう道中で、野盗に襲われたという被害報告が後を絶たず、何度か調査をしたものの、奴等は毎回身を隠してしまい、尻尾を掴めずにいたんです」


その結果、彼等はおとり作戦に打って出たのだ言う。


実は少し離れた所に騎士団が待機していて

2人が襲われたところを見計らって

奇襲をかける手筈になっていたらしいのだが…


「どういうわけか、騎士団が来ないんです」


そこまで話すと、彼等の後方から


「レオ殿!ライン殿!ご無事ですか!?」


と、彼等を呼ぶ声が聞こえた。


「あぁ!良かった、来たようですね」

「何かあったのですか?」

「申し訳ありません。突如、多数の魔獣がこちらに向かって来まして、その対処に追われ、作戦を遂行できませんでした」


あ。

ヴェールがビクッとした。


チラリと見やると、スーっと目を逸らす。


そうなのだ。

私も後になって気がついたのだが

この女神様、私が野盗に集中している間

魔獣からの邪魔が入らないように

自分達の周り一帯に結界を張っていたのだ。


それまで魔力を垂れ流し

稼げとばかりに魔獣ホイホイをやっていたのに

それが突然止んでしまったら…。


より強い魔力を求めて

魔獣が待機していた騎士団へ向かったのは

当然の結果だった。


だけど、ふと思い返してみる。

私達の近くまで来ていた魔獣が

結界により方向転換し

離れた場所で待機していた騎士団が

その対処に追われ駆けつけられなかったとしたら

ヴェールはいつから結界を張っていたのだろう?


もしかしなくても、野盗の気配を感じた時には

すでに結界を張っていたんじゃないだろうか。


そういえば、分かれ道の案内板を過ぎた辺りから

魔獣が出なくなっていた。


…つまりヴェールは

最初から私を野盗と戦わせるために

あらかじめ下準備をしていたのだ。


完全に手のひらの上で転がされた!


悔しいのもあるけど

それよりも、もっと他にやり方なかったの!?

あの2人、本当に危なかったんだからね!


……やっぱ、ぶっ飛んでんのね。倫理観。

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