そういえば情けは人のためじゃなかった

なんだか逃げるように

アグニアの街を出てきてしまった。


できることならもう少し滞在して

ギルドの掲示板の依頼を受けたり

いろんなお店を見て買い物したり

違うごはん屋さんも開拓したかったなぁ。


次の街では絶対に目立つまいと

心に誓うのであった。


そして今現在

私達はというと森の中を歩いている。


森とは言っても

最初に転送されたような場所ではなく

人の往来に合わせて

ある程度整備されている道がある。


「それでもやっぱり魔獣は出るんだね。キリがないや」

「俺達がまとまって行動すれば、特別抑えたりしなけりゃかなりの魔力量になるからな。実質、魔獣をおびき寄せてるようなもんだ」

「その代わり、他の人間達は安全に移動できるわよ。まぁ、儲けも私達が独占しちゃうんだけどね」


どうやら我々は

魔獣ホイホイと化しているようだ。

ホンマに儲かりまんなぁ。


そうやって吸い寄せられてやってくる魔獣を

蹴散らしながら移動すること数日。

分かれ道に差し掛かった。


案内板がある。


← コライ村・グスト山脈  ↑王都


さてどうしよう。


迷っていると2人から声がかかる。


「王都へ行こう。世界に何かしらの異変が起きているなら、人口が多い方が情報は入りやすい」

「できれば、神聖国にもなるべく早く入りたいしね」


そうだった。



世界の均衡を揺るがす事態が起きるから

私がこの世界に召喚されたんだった。


使命を果たさねば。


2人の言葉に素直に従い

王都への道を進むことしばらく。

少し先の方で、数人の争う声が聞こえる。


何かと思い向かってみると

2人の旅人が野盗に襲われていた。


旅人達は必死に応戦しているが

彼等は2人に対して、野盗は4人。

いや、5人だ。

茂みに1人隠れてる。


このままでは、旅人達がやられてしまうのは

時間の問題だ。


「んだよ、面倒臭えな。道のど真ん中でやりやがって」

「このままじゃ邪魔で通れないわ」


ちょっと待て。

そこじゃない。

見るべきポイントはそこじゃないだろぉ!


「カオリ、お前まさか助けに行こうなんて思ってねぇよな」

「お人好しが過ぎるわ。あんなのいちいち助けてたらキリがなぃわよ?」


いやいやいや!

神様!?神様ですよね!?

神様としてその発言はいかがなものかと!


そうツッコんでから思い出した。


あぁ、そうだった。

この神様達は倫理観がぶっ飛んでるんだった。


そこで私は2人に言って聞かせた。


「私の元いた世界には、こんな言葉があるの。『情けは人の為ならず巡り巡って己が為』つまり、人に情けをかけてあげれば、それがいつか自分のためになって返ってくるってこと。それに……対人戦闘のいい機会だと思わない?」


旅人達を助けたいという思いも

もちろん嘘ではないが、本当の狙いは後者だった。


相手が悪党ならイケるかも。

と思ってしまったのだ。


すると、2人は少し驚いた顔を見せるも

すぐに表情を引き締め、真剣なトーンで話した。


「だったら、生半可なことするんじゃねぇぞ」

「あの手のやからは、きっと今までに何人も傷つけ、殺してるわ。つまり生かしておけば、これかも被害者が増え続ける。やるなら、徹底的にね」


2人に言われて、改めて気合を入れ直し

そして………自分の体が震えていることに

気がついた。

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