アニキの総評

「本っ当にゴメン。まさか、あんなことになるなんて…」


急いでニーナに治癒魔法をかけてもらい

事なきを得たジャイルであったが

目に見えて落ち込んでいた。


加減をしたはずのビンタ1発で

身体強化魔法を使っていたジャイルが

まさかあんな状態になってしまうなんて…。


「フ、フフ…気にしないで下さい。僕がまだまだだったってことですよ」


そうは言うがお前…

真っ白に燃え尽きとるやんけ!

後ろにリングコーナーと眼帯出っ歯の

オッサンが見えてきそうだ。


灰になってしまいそうなジャイルを前に

私がオロオロしていると

頼れるリーダー、我らがジンのアニキによる

フォローと解説が始まった。


「ジャイルのことは、本当に気にしなくて大丈夫だ。こいつはカオリが自分より格上の相手だと理解した上で、自分の力がどこまで通用するか試したかったんだろう。身体強化まで使うとは思わなかったが」


そこまで言って、今度は私に向き直った。


「対人戦闘は初めてだと言っていたな。さっきの戦いを少し振り返れば今後の参考になると思う」


私が頷くと、1つずつ振り返っていく。


「まず1つ。最初のペースを崩さず続けていれば、スタミナ切れを狙うこともできたはずだが、そうしなかったのはなぜだ?」

「えっと、それは、本気で向かって来てるジャイルに対して、不誠実で失礼だなって思ったのと、これが訓練じゃなくて実際の戦闘だったらスタミナ切れなんて悠長なこと言ってる場合じゃないなって思ったから」

「なるほど。では次に、身体強化を使ったジャイルに対しては、即座に攻撃を仕掛けたのはなぜだ?」


ジンからの問いかけに

1つ1つ振り返りながら答えていく。


「このままだと追い詰められそうだなって思ったのと、あと…なぜか、長引かせるのは酷な気がして早めに終わらせようと思ったの」


ジンは私から一通り話を聞くと

総評をしてくれた。


「80点、といったところだな。初めての対人戦闘にしては及第点だ。確かにこれが実戦だった場合、戦いを長引かせるのは得策ではない。しかし、先手を打つだけで倒せる相手ならいいが、そうでない場合はただ手の内を晒し、こちらが不利になるだけだ。そうならないように、相手の出方をうかがう必要も出てくる。攻撃手段やパターンを分かっておかないと、避けるのか防ぐのか、対策が立てられないからな。だが厄介なのは、今回のジャイルのように途中からパワーアップしてくるやつだ」


そこまで話すと

ジンは再びジャイルに視線を移した。


「身体強化魔法は、ある一定レベル以上の使い手でなければ諸刃の剣なんだ。副作用でああなる」


灰になりかけているジャイルを指さし

「あいつはまだまだってことだ」

と言う。


なるほど、だからあの時驚いてたのか。


「原則、対人戦闘は早期決着が望ましいが、それが叶わぬ時でも、相手のパワーアップを許してはいけない。許してしまえば、カオリも感じたように追い詰められる可能性もあるからだ」


さ、さすがアニキ!

じゃぁ、私が長引かせるのが酷だと感じたのは…


「カオリが魔力感知でジャイルの未熟さを感じ取ったが故のものだろうな」

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