第2話 突然の危機

森の奥、木漏れ日が揺れる小道を、ミリーは軽快に歩きながらスマートフォンを手に配信を続けていた。


「みんなー!今日も危険な森に突入だよ!コメント、いっぱい送ってね!」


視聴者のコメントが次々に流れる。笑いや驚き、応援の声がスマホの画面を埋め尽くす。

しかし、その明るい声とは裏腹に、森の奥は静寂を帯び、木々の影が不自然に揺れていた。


「…あれ?」


ミリーがふと足を止める。

枝の間から黒い影が、風もなくゆっくりと揺れ動いている。

「なんか…変な気配…?」


次の瞬間、茂みがざわつき、地面を裂くような振動が走った。


「うわっ!」


視聴者のコメントが悲鳴に変わる。


黒い影が跳ね上がり、巨大なイレギュラー魔物の姿を現した。

赤く光る目、長く曲がった爪、鱗で覆われた体。まるで森そのものから生まれたかのような異形の存在。

その咆哮は周囲の木々を震わせ、地面が振動するほどの威圧感を放っていた。


「だ、だれか…助けて…!」


ミリーは恐怖で後退しながらもスマホを握りしめる。

魔物の爪が地面をかき、枝や葉が飛び散る。

画面越しに視聴者はコメント欄でパニック状態。


「逃げてー!」

「助けて!」

「どうすればいいの!?」


ミリーは足を滑らせ、倒れそうになる。

小さな魔法を使おうと手を上げるが、強大な魔物には届きそうもない。


森全体が戦場のように揺れる中、ミリーは叫ぶ。


「いやぁああああ!」


その叫びが、遠くの森にいたカイルの耳に届く。

影のように静かに歩む青年の体に、戦士としての本能がじわりと疼いた。

「…危険信号、見逃せない」


平穏な日常は、ここで突然、予期せぬ危機によって揺さぶられた。

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