第8話 結成! 守護戦隊
聖教会の玄関先の掃除が終わった。先日の騒動は終わり、通りでは壊れた建物の残骸を運び出している。修理や建て替えのためか、大勢の人が動いている。巷からは、
『守護令嬢様さまだねぇ。復興に支援を約束されたとか。おかげで仕事とおまんまにありつけるっと』
そんな声が聞こえてくる。
そうなのだ。あの御令嬢、あの後すぐに皆の前で宣言したのだ。治しましょう。作り替えましょう。皆の営みは守りますと。資金も潤沢に用意していた。まあ、あの破茶滅茶さからすると、それなりの原資は常に必要かなと思う。
いつもは一人で掃除しているのだが、今日は隣にベールを被った赤毛の獣人狼族のセリアンがいる。彼女が聖教会に入ることになったんだ。''首''の啓示受けし初代聖女が立ち上げた聖教会。“生きるものに遍く愛を“を教義としているが、今まで人族以外で教会に入ったもの少ない。心のうちの偏見や差別が顕在しできなかったのが実情。
「貴女も、今日からお勤めに入るのですよ」
「そんなこと言ってもよぅ。聖女さまぁ、元々、ここで飼うつもりで犬にしたんじゃないのか?」
私は慌てて彼女の口を指で押さえて声が出なくさせると左右、後ろまで見て、聞いている人がいないから確認した。
「ごめんね。その話は秘密、内緒でお願い。外に漏れたら、いろいろと面倒なので。それと、私は,まだ正聖女じゃない。見習いだから」
「フガフガっ ファー だから、その後も面倒も見てくれないと困るのという訳。」
セリアンは私の指を外すと腰に手を当てて話をする。
「まあ、教会本部が認めたからベール貰えたんだしね。これからよろしく」
「おぅ」
その物言いに私は顳顬に指を当てて、
「おぅ…じゃない。これからは返事は'はい' ね」
「はぁい」
おいおい教えていくしかない。額にいる御方から、面倒を見ろと言われているのよね。
「これから玄関の内側ネイヴの掃除ね。掃き掃除して椅子は、この日干ししたテリ草で擦るとよく磨くことができるの」
話をしながら玄関を開けて中に入ると、そこには美丈夫が立っていた。背が高く肩幅も広く胸も厚い。短い黒髪の下には瑠璃色の目を持つ精悍な顔つきがある。
上に着ているのは紫色の袖飾りのある騎士服。乗馬パンツに皮のブーツ。私には既視感ありありの服装だったりする。できれば見たく無かった。
そんな彼は顔をあげて上を見ていた。そこには先日の騒ぎで壊れてしまった天窓がある。重装鎧が突き破ったんだよね。
「重装鎧でこの高さから落ちていたら、命はなかったな」
魅力的なバリトンボイスが耳をくすぐる。中身は物騒だけど。
「俺を投げ飛ばしたのは君か?」
彼が私へと振り向き、話しかけてくる。もしかして天窓を壊して落ちてきた鎧の中身は彼なのですが!
確かに助けたのは私かもしれないけど、投げ飛ばしたのも私だけど、あなたをぶん殴って教会まで飛ばしたのは、
「なに?」
隣にいるセリアンを見てしまった。あの時は異形の怪物になってるし、今とは似ても似つかない姿だから大丈夫だと思う。いや、思いたい。
「助かったよ。感謝する。俺はナヴァール公爵家ロードフィリップ」
公爵家の御曹司! 大層な方じゃないですか。目を見張ってしまいます。
すると玄関が開いた。そちらに振り向くと鮮やかなブロンドが丁寧に編み込まれ髪をした女性が顔を出した。
「フィリップ、どうでしたか? あっと聖女………見習いでしたね。こちらにいらしたのです」
この方はレディコールマン! 彼女も来ていたのですね。でも、すぐに顔を引っ込めてしまった。なんでかな。
「聖女」
後ろから,いきなり掛けられた声に振り返るとロード・フィリップは紫の仮面を付けていた。
「俺の事はドゥバァー、って呼んでくれ」
「えっ」
再び玄関が開く音。向きたくないけど振り向いてしまう。嫌な予感がしたけど、そこには緋色の仮面をつけたレディ・コールマンがドアを開けて中に入ってくる。手に何かを持って。
「私くしのことは、オジーンと呼んでくださいませ」
「ええっ!」
一体何事ですか? 巷で噂の2人が場末の教会に何の用でしょう。
「実はあなたのコスチュームも出来ましたのです】
彼女は藍色の生地でできた騎士服を広げた。それを私が着ろと言うのですか? なんでまた。
ですが、その藍色は正規の聖女服に使われているものなんですけど、
「その色は正聖女さまの色、見習いには着られません」
やったね。私は未だに見習いの身、断れる理由が出来た。
でも、
「問題無し! 聖教会本部が認めました。さあっ私たちと共に戦いましょう」
「えっ!マジですか?」
「あなたには、それだけの力があるわ。奇跡も起こせますし、他にも何かをお持ちでしょう? さあ、一緒に魑魅魍魎、悪鬼異形への戦いに赴きましょう」
「すいません。私如きには、荷が重すぎます」
「いぃえ。筆頭聖女へも話しは通してありますの。是非にとの、御言葉も頂いてます」
外堀まで埋められた。ガックリと肩を落として、もう一度振り返り祭壇のあるサンクチュアリに向かって手で印り組み、それはそれは力強くにぎり、
「主よ。一体、私に、なんの試練でしょうか?」
額にいる'御方'と教会の始祖たる聖女へ祝福と託宣を授けた'主'へ抗議の思いを飛ばした。
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