勝負に勝って試合に負ける

玄 律暁(げんりつあき)

勝負に勝って試合に負ける 第1話

★1 出演メンバー22歳以下限定のイベント


 NIIGATA LOTSはFM新潟の本社内にて運営されているライブ・イベントスペースであるが、新潟においてのライブハウスとしては最大規模となる。キャパシティは700人。新潟にツアーで周るプロのバンドもよく使用している。というか逆に、新潟のライブハウスで活動している無名のバンドは通常LOTSでは演奏出来ない。高いお金を支払えば可能かもしれない。しかしまあ、とんでもなく赤字となることは明白だ。

 ちなみにFM新潟には私が19歳の頃に何度かラジオ出演のために足を運んでいたので、もぎりをしていたMCの方が「ちょっと玄君、手伝って」と言って、何故か私が3時間くらい捥りをすることになった。

 通常ライブハウスのキャパシティは100人以内で、当然ながらその規模で満員にできるバンドじゃないとLOTSを埋めることは不可能だ。それは2007年の話だから、現在2025年においての新潟を拠点としたバンド関係者がどうなっているか全く知らない。バンドブームっていうのが大昔はあったそうだが、生まれてから今までの間、現在がバンドブームであるという話は聞いたことがない。

 また、近年では多くの人にライブを観てもらって認知してもらうことが第一の目的であれば、Youtubeなどで配信すれば良い。ライブハウスでは最大100人程度にしか観て聴いてもらえないが、配信であればYoutubeを漁っている通りすがりが幾人か観てくれるだろう。音は決して良くないだろうが十分に伝わると思う。

 ただ、ライブにはその場にいないことにはわからない・伝わらないこと、というのは間違いなくあり、その貴重な体験を求めてライブに足を運ぶ人もいるだろう。

 私は出演者側であったが、そのことを意識させた出来事が2007年に起こった。

 何故22歳以下なのかわからないけど……多分、大学生の年齢までを考慮して決めたのかもしれないが、そういった企画をとある巨大企業が立ち上げた。時間は正午から20時くらいまで行っていたので相当数のバンドが出演していた。私を含めた4人のメンバーとで、この企画に出演することとなった。どういう経緯だったかあまり覚えていないけど、音源を送った記憶はあるので事前に審査があった。ちゃんとした音源じゃない。ライブハウスがラインをそのまんま録音したものだとか、そういったざっくりしたものだ。


 メンバーについて。

 ドラムは同級生。

 リードギターは私。

 ベースは5歳年下の奴。

 ギターボーカルも5歳年下の奴。


 私より5歳年下というのは17歳であるということだ。かなり若いので腕前はどうなのか、というと、ベースの奴はどうしようもなくヘタレみたいな感じだったが、ギターボーカルはかなり上手かった。ギターはバッキングしかしないし、リードやらせたら全然ダメなのだけど、声が良かった。それはもう圧倒的に。

 彼は19歳になった時に大学へ行くことになり、卒業後に新潟に戻ってきたが、ボーカルをすることはなかった。歌いたがらないのだ。たくさんのボーカルとセッションしたことがあるのだけど、男性ボーカルで、彼以上に上手くてプロでもやっていけそうだと思える人はいなかった。

 彼らは若かったので、散々悪い遊び方をした。いたずらがエスカレートしたような感じ。そんな遊び方をしているといつかは警察に怒られるだろうなとは思っていたが、結構危ない事態になったこともあった。

 ヘタレのベースが大麻を発芽させて警察に補導された。ペットボトルのフタに種を入れて育てていたのだ。幸い注意警告だけで済んだのだが、そもそも何故警察にそれがバレるのか。SNSのない時代に何故そんなことが起こりえるのか。

 ある時、彼の実妹が保健室の先生に相談した。保健室登校をしていた。

「何か心配ごとはある?」

「お兄ちゃんが何か明らかに違法と思われる植物を育てているようで……」

 そして保健室の先生が、通報するに至った。という訳だ。

 さて、出演メンバー22歳以下、であるものだから周囲のバンド連中を眺めると、ほとんどが音楽専門学校の人間だったが、1つのバンドがそこそこ有名だったらしく、そのことを知ったのは、そのバンドを見るために集まっている人々の数が多く、バンド名と噂が飛び交っていたからだ。

 しかしそのお金持ちキラキラバンドと私のゴミクズバンドとが、あのような事態に陥るとは思ってもいなかった。

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