第12話 スポーツガイダンス
2012年11月17日 晴れ
寿子を呼び出そうと思った。
「寿子、今朝の九時頃、丘の上スタジアムで集合しよう。運動着で来いよ」
こいつの身体的な才能を測ってやるんだ。
「スタジアムでデート?」青田はもう自分が僕の彼女だと決めつけている。
「海鳴くんがそうしたけりゃ、いいよ」
寿子は運動着に着替え、わざと可愛いカチューシャを選んでつけた。
「海鳴くん、気に入ってくれるかな……」
鏡に映る自分を見つめながら、寿子はどうも満足そうにない。
「九時に集合って言ったのに……もう午前九時四十二分だよ……」
僕は無力なまま、丘の上スタジアムの観客席の一角に座り込んだ。
「寿子ってやつ、何やってんだよ」
……
ここに来たのは彼女の身体能力を測るためだ、と伝えると、少女のがっかりした表情は画面から溢れ出るようだった。
「まず身体能力を測って、午後から遊びに行こうじゃないか」
僕は白眼を翻した。
運動着で来いって言ったんだから、当然運動するために来るんだよ。
僕は寿子の頭を撫でた。実はこいつ、意外とあっさりおとがめられる子だ。原作のように怖い感じは全然しない。
「……うん」
基礎的なウォーミングアップをさせた後、僕は少女と一緒にトラックの上に立った。
「最初の課目、百メートル走!準備、スタート!」
僕は手元の電子ストップウォッチを握り、計測を開始した。
「百メートル、手動計測で十二秒六十三だ」
「寿子は一度もトレーニングしたことないのに百メートル十二秒六十三?俺が今走っても十四秒二かかるのに!」
僕は気絶しそうになった。
「次の課目、五千メートル走」
「このトラックは一周四百メートルだから、十二周半走ればいいんだ、分かったか寿子」
「うん」
スタジアムのトラックの上で、十二歳の寿子は僕の想像を遥かに超える持久力で疾走していた。
……
「五千メートル、十九分四十七秒?マジかよ!」
僕は地面に跪き伏した。これはもう人間じゃない。俺が一年間トレーニングしても絶対到達できないレベルだ。
……
「次の課目、四キロの砲丸投げ」
僕は体育会系の高校生の兄貴たちに四キロの砲丸を借りた。
「海鳴野、五点八メートルだ!」と、一人の体育会系の生徒がまるで本物の記録係みたいに記録してくれた。
「この女の子も測るのか?見た感じそんなに筋肉質じゃないけど」
「先輩、こいつを甘く見るなよ。この子の身体の中には神様が宿ってるんだ」
「神様?蒼翼高校砲丸投げの王者・俺が、何が神様だか見てみせてやる」
どっしりとした体格の体育会系の生徒が歩いてきた。
「俺は天目力だ。よろしく頼むぜ、後輩」
天目はのん気な顔をしている。
「こいつは俺の友達で、今年十二歳だ。どれくらい投げられると思う、天目先輩?」
「高々八メートルか……たぶん七点五メートルかな」
「彼女はまだ一度もトレーニングしたことがないんだよ」
「三、二、一、投げ!」
僕の号令と同時に、砲丸は寿子の手から放り出された。
「天目隊長!この子、本当に未来の女子最強になるかもしれないぞ!十二点六メートルだ!」
砲丸投げ部の部員が興奮して駆け寄ってきた。これはまさに天才だ。
「十二歳で十二点六メートル?しかも未経験?」
この一連のデータが天目力の頭を駆け巡った。
「海鳴くん、君の彼女が高校に入る時は、是非俺たち蒼翼高校に来てくれないか?」
天目力の眼差しが突然真剣になった。
「え?こんなに早く?」
「この子の身体的な才能は、これだけじゃないだろうな、少年」
「俺は緋村宏志だ。ただの銅メダル獲得者だよ、もう何年も前の話だけど」
四十近い男が歩いてきた。
「緋村コーチ、あなたもこの子をスカウトしに来たのか?」
「それ以外にここに来る理由があるか、天目くん」
緋村コーチの頭の中には、もう自分が青田寿子を率いてスタジアムを制覇し、日本を飛び出してオリンピックに挑む姿が浮かんでいた。
「こんな天才、俺・木村平も育ててみたいよ」
「ああ、木村コーチ、お越しください」天目力は慌てて木村を引き寄せた。
彼らが取り合いになっている隙に、僕はもう寿子の手を引いてその場を離れていた。
今の段階でコーチを決めるのはまだ早すぎる。
「遊びに行こう」僕は寿子の手を握りしめた。
「うんうん」
僕と寿子はショッピングモールでプリクラを撮った。写真の彼女はとても恥ずかしそうな表情だった。
「そういえば、前世の高校一年生の時付き合った彼女、一体どんな顔だったんだっけ」
「いいや、考えるのやめよう」
僕は思い出すのを諦めた。
(以下、作者からのお願い)
この章で第一巻は終わりとなります。ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。もしお口に合ったようでしたら、星をつけていただけると幸いです。これは本当に重要なことです!
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