再び咲く花

籠目

第一章|ちゃんと生きている人

朝六時半、みどりは一番に起きる。

台所で湯を沸かし、両親の分も含めて急須に茶葉を入れる。長年の癖で、分量は量らない。


「おはよう」


父は新聞を畳み、母は小さくうなずく。特別な会話はない。けれど、この静けさは嫌いではなかった。


会社では、みどりは目立たない。

それでも困ったことがあれば名前が呼ばれる。「みどりさん、これ分かります?」と。

後輩は安心した顔で席に寄ってきて、上司は自然に仕事を回す。


頼られることに、誇りはある。

同時に、当たり前になりすぎて、自分の時間がどこにあるのか分からなくなることもあった。


帰り道、駅前の掲示板に貼られた街コンのチラシが目に入る。

深い理由はない。

ただ、今日は少し早く帰れそうだった。


「行ってみるか」


そう思った自分に、みどりは少しだけ驚いた。

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