番外編『惚れられた理由』
「自己評価が決して低くない彩夏があなたに惚れたものだから、あたしは『どうして柊?』と思った。社長令嬢でもモデルでも医者の娘でもなく、ただのゲーム好きでしかない柊なんかがどうして、って」
「それはそうだね……」
千咲は夢を諦めて心に深いトラウマを抱え、今に至る。早苗の言葉が深々と刺さった気がして、じんわりと涙を浮かべる。
「惚れられた理由、本人に聞いたりした?」
「えっと……これは決して自慢とは受け取らないでほしいんだけど……優しい、から?なんか、あんま人に話さないことを話しやすいとか、今までの友達は尊敬してきてたから遠いとか……あ」
千咲は「しまった」と思い、自分の失言に気づいて途中で止めてしまった。
途中で止めてしまうことは、言葉を続けることよりも失言に気づかれやすくなる。そのことに気づき、また「しまった」と思った。
「そう、彩夏がそんなことを」
「ご、ごめんなさいっ!でも、だからといって友達として見てないなんてことないと思う!早苗ちゃんは優しくなくなんかない!」
失言を隠すためか、はたまた本心からか、必死に言葉を並べていく千咲。
「あなたがそれ言う?」
「確かに言葉キツくて泣いたりしたけどさ……でも、でもっ。彩夏が傍に置いてる早苗ちゃんだもん!早苗ちゃんがひどい人には見えないからっ!わたしがダメダメなのが悪いのっ……!」
早苗の言葉がきついのは、自分が無能だから。千咲の認識は、誰が見てもわかるくらいネガティブなものだった。
たった一度の偶然。そこから千咲の人生は狂った。何度も心が壊れ、そのたびに必死に壊れた心を直そうと粘土のようにこねくり回し、そのたびに形が変わり、今の千咲が形成されている。
「そこまで泣く必要ないじゃない……って、あたしが言えたことじゃないわね」
「…………」
「彩夏には悪いことをしたと思ってるから、あとで謝るつもりよ」
「えっ?それはどういう?」
「それはまだ、乙女の秘密よ」
(なにこれ、かわいい……)
千咲は、早苗の言葉に思わずキュンとしてしまっていた。
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