第5話『えっちなのなんて求めてないから!求めてるのは友達だから!』
昼休み、食堂。
1年、2年、3年の女子生徒たちが、食堂のおばちゃんに話しかけて昼食を買ったり、だべって会話したりしている。
千咲たち5人は、同じ机の席に座って昼食をとっている。
(も、求めてるんじゃないし!触られただけだし!)
乳首をコリコリ刺激されイッてしまったことを思い出し、千咲は顔を赤くして縮こまっている。
(にしても、やっぱ4人とも顔面偏差値高い)
千咲、4人の顔を眺めていく。
4人の顔は他の追随を許さない美人さ、かわいさ。
(特に愛梨ちゃん。ふわふわしてて顔がかわいくて眼福だなぁ……)
千咲、愛梨を見てほわほわした表情になる。
「ねえねえ愛梨ちゃん、私服ってどんな感じなの?」
「ゴスロリ」
「地雷系だ……かわいい」
愛梨のおどおど、ふわふわした雰囲気に萌えてキュンとしてしまう千咲。
「えへ、ありがとう。モデルやってるから、いろんな服あるよ」
愛梨、千咲に向けて上目遣いの視線を送る。千咲、ドキッとしてしまう。
「え、そうだったの?」
「うん」
愛梨、うなずく。
(やば、やっぱすごい人ばっかじゃん!ね、こんど家行って私服見に行っていい?)
心の中の言葉を身振り手振りで表現し、愛梨を見つめる千咲。
「千咲ちゃんの頼みだったら、いいよ……」
恥ずかしがっているような仕草で、愛梨は承諾の言葉を出す。
「やったぁ!ありがとう!LINEで予定決めようね!」
ぱあっと笑顔になり、とても嬉しそうな千咲。にこにこ笑顔で、ほわほわした雰囲気が5人の間に流れていく。
「千咲ちゃん、コミュ力高いよね。わたしと違って」
愛梨の言葉に、千咲はピクッと反応して真顔になってしまう。
「ああ。これは友達が欲しくて焦ってるだけなんだよね」
真顔のまま返答。
彩夏、千咲にそっと触れ、
「大丈夫だから。ここのみんな、千咲を歓迎してるよ」
と、優しい言葉を投げかける。
「あたしは歓迎していないわ。彩夏の隣に相応しいのはあたしよ」
早苗は依然、千咲に対して厳しい対応。千咲、早苗の対応にしゅんとしてしまう。
「推しに嫌われたぁ……つらたん」
うなだれる千咲と、その千咲を心配そうに見つめる彩夏。
下校時間。校門をくぐって学校の外に出る千咲。
その後ろを彩夏、早苗、里見、愛梨、ほか女子生徒たちが歩いている。
不意に千咲の視界に出てくる、小学生くらいの少女。てちてちと歩き、道路を渡る。
それと同時、音を立てて走ってくるトラック。
「ん?」
トラックと少女に気づく千咲。
千咲が6歳の頃。
事故に遭い、病室で仰向けで寝ている。呼吸が弱い。
「はいこれ、がんばったご褒美」
院長が、ベッドで仰向けになっている6歳の千咲にゲーム機を手渡した。
「あ、ありがとう……将来、ぜったいみんなを笑顔にできる……お医者さんになる」
「そうか。じゃあ、ここで待ってようかな」
にっこりと千咲に笑いかける院長。
その笑顔に、千咲は救われた。
自分の命と、目の前の少女の命。選ぶべくもない。
千咲の行動は──たったひとつ。
気づいた時には、千咲は飛び出していた。
「あぶないっ!」
千咲、少女を素早く抱きかかえ、そのまま飛ぶ。すぐそこまで、トラックは迫っていた。少女、呆気にとられたような表情に。
ガンッ!
「あうっ!」
鈍い音。千咲の苦痛の声。勢いよく地面に倒れる。
あまりの激痛に、左足を押さえる千咲。腕から少し血が出ている。
「いった……だ、大丈夫?」
苦痛に顔を歪め、大量の汗をかきながら、少女に向かって話しかける。
千咲が視界に捉えた少女は、無傷。
無傷な少女を見て、千咲は顔を歪めながらも安堵した。
「だいじょうぶ。それよりおねえさんのほうが」
少女は千咲を心配そうな表情で見つめる。
「だ、だいじょう、ぶ……あうっ!」
足に痛みが走り、思わず顔を歪め歯を食いしばる。
「千咲ちゃん!」
彩夏、焦りながら千咲に駆け寄る。
「千咲!動くな!」
里見、千咲に向かって叫びながら、素早くスマホを取り出す。
119の番号を打ち、救急通報。
清潔な雰囲気を感じさせる、病院の診察室。
千咲、椅子に座って白衣の女と対面している。
「はい、これで終わり。幸い、重症じゃなかったわ」
救急通報があったが、想定よりも重症ではない。その報告に、千咲はほっとして胸を撫で下ろした。
待合室。様々な人たちが椅子に座ったり、受付をしたりしている。
千咲と里見、並んで椅子に座っている。椅子は柔らかく、怪我をした千咲に負担をかけないようになっている。
千咲は怪我した片足にはギプスをして松葉杖を持っていたが、腕は血が出たところに傷を覆う絆創膏をしたのみで軽傷。
(ここに来たのは車に轢かれた時ぶりだなぁ)
と、心の中でそんなことを考えながら、少し悲しそうな顔をしてぼーっと遠くを見つめる千咲。
里見、千咲を見て、
「他のみんなには、邪魔だって言って帰ってもらったよ。悪い意味じゃなくて、安静にさせるためにな。足、大丈夫か?」
労いの言葉をかける。
千咲、里見の方を見て、
「1ヶ月弱だって。まあこれくらいなら最悪なんとかなるよ」
体の動きで、元気だということを示す。
「ってか、千咲すごいな。迷わずすぐ飛び出して女の子助けたじゃねぇか」
里見の千咲を見る目が、すごいヒーローでも見るかのような目に変化した。
千咲の胸にちくりとくる何か。
「……癖で」
ただ一言。千咲は、寂しそうな表情で「癖で」とだけ答えた。
「癖でこんな自己犠牲払うなよぉぉぇ!」
思わず毒舌とツッコミが混じったような喋り方になってしまう里見。
(あ、毒舌だ。でも、早苗さんの圧ほど怖くない)
里見の毒舌は、千咲にとってそこまで怖いものではなかった。むしろ、毒舌ではないのでは?とさえ感じていた。
「
「まあな」
そりゃそうか、と言ったふうに納得した里見。大きく腕を上に上げ、伸びをする。
「あたし、ここ入るために医者を目指してんだよ」
里見の、決意のこもった眼差し。
千咲は胸がチクッとし、思わず手で自分の胸に触れた。
「母さんがよく言うんだけど、毒と薬は紙一重なんだって。100パーセントの酸素が猛毒になるのも似たようなもんだ」
唐突に、分かりづらい例えを話し出す里見。
「詳しいね。酸素の話なんて漫画でしか聞いたことない」
しかし、千咲は酸素の例えを知っている様子。里見に反応した。
「もしかして、千咲ってジョジョ読んでんのか!?」
千咲の反応に対し里見は、いつもは少しむすっと気味の顔をぱあっと明るくした。
千咲は昔学校で、男の子が好きそうな仮面ライダーのフィギュアを持っていて、いじめられたことがあった。
「男っぽいやつはちょっと……」
暗い顔でぼそっと答える千咲。しかし
(いや、こんなところで怯えてちゃ友達なんてできない。本当にいいの?)
千咲はトラウマができてから、友達いた歴が極端に少ない。もう二度と、そんなみじめな生活は送りたくない。
そのことを思い出した千咲は、
「お、面白い、かなっ!」
勇気を振り絞り、声を発した。
「ジョジョ面白いよな!」
依然ぱあっとした笑顔の里見。千咲をキラキラした目で見つめている。
(新鮮……里見ちゃんが笑顔なんて。私も、友達作るのにこんなんじゃだめだよね)
千咲、笑顔になり、
「好き!」
と、自分の思いを里見に伝えた。
「そ、そうか!」
少し頬を赤くする里見。
(ああよかった、男物の趣味言っても大丈夫だ)
千咲は、里見に安心感と安らぎを覚えていた。
「里見ちゃんとはいいお友達になれそう!」
「千咲……」
里見は頬を赤くしながら、千咲をずっと見つめていた──
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