小さいウサギと大きいウサギ
満月の夜に神様は大きなウサギが集まる群れと小さなウサギが集まる群れに神託を出しました。
それぞれの群れは代表を一羽選び、神様のもとへ送り出しました。
神様のもとについた二羽のウサギは神様からお題を出されました。「次の満月の夜までに自分がやってくるまでに貴方たちができることを自分に示しなさい。そうして優れたほうの群れを自分の神使として認める」と言われました。
代表である二羽の兎は急いでそれぞれの群れに戻り、次の満月までに神様に認めてもらえるような素晴らしいものを用意しようと話し合いを始めました。
大きな兎たちは小さい兎が作るものを見て、自分たちがそれよりも少しでもいいものを用意したら神様に気に入ってもらえるのはこちらになると考えました。大きなウサギたちは夜の間にこっそりと隣の山にある小さい兎たちが暮らしているところまできて聞き耳をたてます。
「神様に気に入られるものは何だろう」
「踊りはどうだろう?」
「悪くはないけど大きいウサギたちが同じことをすればあちらのほうが迫力が出てだめかもしれないだろう?」
「じゃあどうする?お菓子はどうだろう。すぐにまね出来るものではないし」
「いいね、それに決まりだ。早速準備を始めよう」
「まずはどんなお菓子を作るか決めなくちゃ」
「満月のように丸くて白いお菓子にしよう」
「それはいい!きれいに丸めて満月をかたどった団子を作るのはどうだろう」
小さいウサギたちの話し合いは朝まで続きました。
一方、聞き耳を立てていた大きなウサギたちはでは自分たちも団子を作ろうとそこから離れていきました。
小さなウサギたちはおいしい団子を作るため、まずは材料を探しました。
栗、稗、団栗、蕎麦、米、様々な木の実や穀物を集めます。おいしい団子を作るためにいろんな方法で団子を作ります。すり潰して粉にして、水を加えこね煮るか焼くか。
小さい兎たちの間では、最終的に米で作った団子が人気でした。作るお団子が決まった日にはもう三日後に満月になるような日でした。
大きなウサギたちは小さなウサギたちの真似をして団子を作ろうとしましたが体の大きさが違うので同じようなものは作れませんでした。明日にはもう満月になってしまうと焦った大きなウサギたちは、夜の間に小さいウサギたちの団子を盗んでしまいました。
朝になり団子がなくなったことに気が付いた小さいウサギたちは急いで団子を作ろうとしましたが、米をすり潰して粉にするには時間が足りませんでした。仕方なくそのまま米を蒸して布で包み押し固めて丸め、餅にしました。
夜になると赤い満月が空に昇っていました。
月の神様の前で大きなウサギたちは得意げに団子を差し出し、小さなウサギたちは普段より小さくなりながら先程できたものを差し出します。
神様はウサギたちの前で団子と餅を食べて言いました。
「どちらもとてもおいしいのですが団子のほうが私の好みです」
大きいウサギたちはその言葉を聞きすぐに喜び、跳ねまわりました。
「なので私の神使は小さいウサギたちで決まりです」
大きいウサギたちは神様になぜ団子を渡したのは自分たちなのに小さいウサギたちが神使なのかと言いました。
「私は空にある月からずっとあなた達を見ていたのです」
神様はそう答えました。大きいウサギたちはみんな耳をたれ下げて落ち込んでいます。
「しかし、団子を私に渡したのはあなた達です。ご褒美に仕事をあげましょう」
大きいウサギたちは次々に空に浮かんでいき、月に降りました。
「お餅は簡単に作れますし、力が強いあなた達ならたくさん作れるでしょう?」
神様はニコニコと笑顔を浮かべながら大きいウサギたちに言いました。大きなウサギたちは今でも休まずに月でお餅をついています。
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