第2話 サク

旗箱はたばこサクは、その名の由来でもある桜色の瞳を持つことから、幼い頃より謂れのない差別を受けたり、いじめられたりしがちだった。病弱で貧血気味なためもあるのか、肌は抜けるように白い。その肌もまた、「雪女」「白うさぎ」などとからかわれる種だった。

中でもサクが嫌いだったあだ名が「透明人間」。透けるような肌の白さに存在感の薄さを掛けているのだと思われたが、透明ならあなたたちには見えないんでしょ、放っておいてよ、と思って無性に腹が立つのだった。


両親や2つ上の兄、同居の祖父母など、家族の誰もがサクには甘く、大事に育てられたが、外の世界でのいじめやからかいには自分で耐えるしかない。こんな容姿に生まれたのはサク自身のせいではないのに。


さらに悪いことに、サクにはエンパスの気質があり、人の悪意に大きく影響されてしまう。いじめやからかいにはもちろん、好奇の視線が自分に向く時にも、頭の中に黒い靄が湧いて、そこから徐々に身体を乗っ取られていくような気分になる。

それはサクが直接の標的でなくても同様で、何となく場の空気が悪かったり、誰かを責め立てるようなピリッとした感覚があるような時にも、影響を受けてしまうのだ。


黒い靄はサクの身体にだんだん染み込んでいく。白い肌がどす黒い色にくすみ、重たくなっていくのがサクには実際に見えるし、重しのようなもので身体の動きが封じられ、緩慢になるような体感もある。

自分の身体でありながら、分厚い壁が意識を阻んでそれとの繋がりが希薄になるそんな時、世界との境界も曖昧になって、いじめた側の悪意は元々自分の中に蟠っていたものだったと感じる。

つまりはすべては身から出た錆ということなのねと、自分を含め全てを投げ捨ててしまいたい気持ちになる。

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