寧々屋 命 (ねねや みこと)の失踪 〜『ステラレコード』前日譚

冷猫 黎椛 (ひやねこ れいか)

第1話 日没

「またね、サク」


いつもの分かれ道で、親友の最後の言葉を聞いた時、ザアッ…と秋の気配を含んだ風が吹いて、旗箱はたばこサクの漆黒の三つ編みを揺らした。

サクは、その風が自分の頭の中を吹き抜けていったような不思議な感覚に驚いた。まるで、眉から上の頭をすぱんと真横に切り落として、剥き出しになった脳を、風が洗っていったかのような。


そんな、あるはずのない感覚に一瞬気を取られているうちに、幼少期からの親友だったみこ――寧々屋ねねや みことは、スタイルのよい長身を見事に操ってサクに背を向け、思い切りのよい1歩をもう踏み出していた。


黒いビロードのリボンでポニーテールにした、日に透けるブロンドの長い髪が翻る瞬間、彼女の左眼が濃いオレンジ色にギラリと光って見えた。

太陽が1日の務めを終えて沈んでいく刻限、その名残の陽が映っただけのようにも思えたが、その強い光はサクの心に長く居座り続けることになった。

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