異形記録ファイル

異形-No.721「影骸」

■――■【基本情報】■――■

【報告書ID】KP-2054-11-03G

【作成日】日ノ出暦 2054/11/05

【最終更新日】日ノ出暦 2054/11/20

【閲覧レベル】レベル3

■――■【事案概要】■――■

1. 異形観測・出現情報

【異形名称】異形-No.721「影骸」

【異形階級】暴力級（討伐済み）

【発生地区】日ノ出 東部地区 深夜の地下鉄構内および地下街

【異形観測装置記録】23:00、地下街の照度が異常低下。防犯カメラ映像に「立体的な影」が人間に襲いかかる様子が記録され発覚。

【被害状況】深夜の帰宅者および警備員、計42名が死亡。遺体はすべて「影」を剥ぎ取られたような外傷のない状態で発見された。

2. 対応作戦情報（終火奏報告）

【作戦名】作戦「光差す奈落」

【作戦コード】OP-TS-550

【対応部隊】終火奏 第四部隊（隊長：職員コード KR-1055）

【隊長階級・氏名】金剛級 / 葛城 ヒカリ

【出動兵力】金剛級 1名、銀英級 2名、銅賞級 5名

■――■【詳細経過および記録】■――■

3. 戦闘・捕獲・研究プロセス

[終火奏 第四部隊 戦闘過程]

11月3日 23:45、第四部隊が地下街へ進入。異形-No.721は壁や床の影から自在に出現し、隊員の背後から鋭利な影の爪で奇襲を仕掛けてきた。

葛城隊長（金剛級、神威「不動の壁」）は、自身の周囲に光の障壁を展開し、異形が影へ潜り込むのを阻止。しかし、異形は隊員自身の影に擬態し、内側から攻撃を試みたため、部隊は極めて慎重な回避を強いられた。 24:20、銀英級隊員が災抱レベル3武器【閃光の杭（フラッシュ・パイル）】を使用。狭い通路内に超高輝度の光を充満させ、影を消失させることで異形を実体化させた。実体化した異形は黒い霧状の骸骨のような姿をしており、葛城隊長が障壁を収束させ、物理的な圧殺による討伐を完了した。

[律眼・火鎚 事後調査]

律眼による解析： 現場に残された残留物を解析した結果、この異形は「光を遮る現象」そのものが生体化した存在であることが示唆された。犠牲者の死因は、自身の「影」を剥ぎ取られたことによる、魂と肉体の結合崩壊であると断定。

火鎚による評価： 回収された「黒い骨片」は、光を100%吸収する特殊な波長を持っており、隠密装備や光学的迷彩の素材として極めて高い価値があると評価された。

4. 作戦中の通話記録（主要記録）

23:55 [隊員/銅賞級]: 「隊長、足元に……！ 影が、俺の足を掴んで引きずり込もうとしてます！」

24:05 [隊長/葛城]: 「動くな！ 下手に動けば影が伸びる。全員、背中を合わせろ。私の光の範囲から一歩も出るな！」

24:25 [隊長/葛城]: 「杭を打て！ 影を殺すぞ！」

5. 討伐兵への聴取記録（録音反訳）

聴取対象者: 金剛級 葛城 ヒカリ（職員コード KR-1055）

聴取担当: 職員コード HR-0012 / 異形人事部

聴取日時: 日ノ出暦 2054/11/04

[質問者]: 異形の性質についての感想を。

[対象者]: 狡猾でした。ただ破壊するのではなく、こちらの恐怖心を利用して影を広げようとしていた。光さえあれば無力ですが、一度でも影に呑まれれば、金剛級であっても危なかったでしょう。

6. 討伐・収容結果

【最終処置】討伐完了

【異形残骸/収容状況】霧散しなかった数片の骨状の組織を回収。火鎚の極秘ラボへ移送済み。

【最終被害報告】人的被害：死亡42名。

　　　　　　　　物的被害：地下街の一部損壊。

【討伐兵負傷報告】銀英級1名：影に足を呑まれ、軽度の凍傷および精神的ショック。

■――■【技術・研究情報】■――■

7. 異形の詳細特性（律眼報告）

【世界滅亡予測】本個体が自己増殖し、日ノ出全域の照明インフラを破壊した場合、夜間および屋内における人類の生存権は完全に喪失する。人類は常に強力な光源の下で生活することを強要され、最終的には光への過剰適応による視覚崩壊と、影への恐怖による集団パニックで文明が崩壊すると予測。

【世界滅亡クラス】汚染 および 崩壊

【外見・形状】普段は平面的な影に擬態。戦闘時は黒い煙を纏った骸骨のような形状。

【観測された特異性】「影の簒奪」対象の影を切り離し、自身の質量として吸収する。

8. 災抱武器製造（火鎚報告）

【製造対象異形】異形-No.721 骨片

【災抱武器名称】【影纏いの外套（シャドウ・マント）】

【災抱レベル】レベル3

【特性/主要能力】使用者の姿を影に同化させ、視覚的に不可視の状態にする。

【適正試験合格者】精神が影に呑まれないよう、強い自我を持つ偵察要員を推奨。

■――■【特記事項・機密情報】■――■

9. 八咫烏からの指示・処置

「地下街での不審火および有毒ガス発生」として隠蔽。目撃者への記憶処理完了。

10. 記録保管・機密情報統制

【関連ファイル】RIT-721-D（暗黒物質解析）、HIZ-721-C（隠密兵装）

【紙椿補足】暴力級の中では隠密性が高く、初動対応の遅れが被害を拡大させた。観測装置の照度センサー感度を再調整すること。

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