才能ない最高の人生と、才能あふれた最悪の人生~運営さん、この「完璧な人生」を返品したいんですが
別所 セラ
第1話 才能ない最高の人生
最高な人生だった。
数百年に一度訪れる星降る夜にグラネド王国の第一王子として生まれ、その光景からも建国の祖の再来とも呼ばれ期待されていた幼少期。
私は周囲の期待に応えるように学問、身体能力、芸術等ほとんど全ての分野で同世代を圧倒していた。
齢が八を数えるその年、王都にある大神殿で神授の儀を執り行ったときに初めて周囲の期待を裏切った。
世界を見守る神様からスキルと加護を授かる為のこの儀式、世に生を受けた人間類はほぼ例外無く何かしらのスキルと加護を受ける。
はずだった。
しかし、私はただの一つとしてスキル、加護を与えられなかった…
神様の加護により修練の過程でスキルが進化することや新たに生まれる事もあるが、加護なしの私には期待が出来ない…
この日から、私の人生はどん底に転落…
しなかった。そう、しなかった。
異端の私に対して父王が呟いていた言葉は今でも私の心に残っている。
「絶対、凄い偉大な人間になるやつだ、これ。普通じゃ確認出来ないような隠しスキルとかギフトとか呼ばれるやつ持ってるやつだ。若しくはこれきっかけで迫害されて覚醒したりして復讐されるやつだ。幸せに育って欲しいから初代が残した書物に残ってる復讐ルート以外の覚醒パターン全部試そ。」
この日から、覚醒を促すためといわれ様々な試みが行われた。
わざとらしい罵倒やいじめにもならないいじめ行為(全員が辛そうにしながら)。
地方視察中の盗賊からの襲来(やらせ)。
大森林への置き去り(なぜか用意される果物に襲ってこない魔物たち)。
僻地に住む最古にして最高の魔女の元への留学(滅茶苦茶親切で分かりやすい)。
伝説級武具の適正調査。
そして、最高の仲間たちと出会うこととなる魔王討伐の旅。
etc.
結局、何一つ覚醒には結びつかずこうしてスキル無・加護無の人類として一生を終えようとしている。
涙で顔をぐしゃぐしゃにした最高の家族や最高の仲間たちに囲まれて死ねるなんて何て最高な人生だったのだろう。
もう声は出せないが、声を大にして叫びたい気分だ。
嗚呼、素晴らしき哉、この人生。
「おい、何勝手に満足そうな顔をして逝こうとしてんだ!まだ、99勝99敗で決着はついてないだろう!」
ソダスよ、決着がつかなかったのは引き分けになってからお前が勝負を挑んでこなくなったからだろう。それでなくても<剣神>となったお前に剣で勝てるやつなんて存在しないさ。
「そうだ、お前から教わった技が全部習得できてねえのに何勝手してんだよ!」
マーシャル、私が冗談で言った技を本当に習得しようとしてたのか。いくらお前が<武神>だからといって空間を掴んで投げるとか空間切断に耐えるとか無理だろう、というか幾つかは習得できたのか。やっぱすげぇな。
「やっと、不老の薬が完成したんです!あなたのためにこの薬に心血を注いでやっと…なのに、もう手遅れになってしまったとは…。あなたと話す錬金術の未来は本当に楽しかった、スキルも加護も持たないはずなのにあなたは確かに私の発想の師匠だった。」
トリストス、お前は本当にすごいやつだな。<創物神>となったお前なら、世界のために最高の発明をできるだろうに私なんかのためにありがとう。
「ユーハ、どれだけ魔法を創れてもあなたを救えないんじゃ意味がないわね。もっと早くに生命魔法に興味を持ってたら間に合ったのかな…」
マギノ、その気持ちだけで十分だよ。出会った頃はあんなに敵視してきたのに、セシリアとともに良き妻として最後まで支えてくれてありがとう。<魔神>の称号によって誤解されがちだけど、純粋に魔導を極めたものがたどり着く境地だって私は知っているよ。
「ユーハ様、あなたは最後まで満ち足りた顔をされるのですね。こんなにもあなたとの別れを惜しんでる人達に囲まれてるというのに。私は今初めて神様を恨んでいます。加護さえ持っていればもっと長生きできたでしょうに。あなたほどの人間がこんなに早く逝ってしまうなんて、こんなに不幸なことはありません!」
セシリアよ、<聖神>である君が神様を恨むなんて言わないでくれよ。それに、私はもう80を超えているんだ、十分生きたさ。確かに君たちを置いていくのは心苦しいが先に行って向こうの環境を整えておくよ。そしたらまたみんな一緒に仲良くしよう。
声は出せないが、声をかけてくる仲間たちに感謝の気持ちを伝えていた。
そんな私だが鼓動が弱まっているのを自分で感じる。苦痛はない。恐れもない。ただ一つ後悔があるとすれば、最後まで私の才能を疑いもしなかった父王の期待に応えられなかったことだろうか。
周囲の音が遠くなっていき、何も見えなくなってきた。
これが死か。最高の人生を締めくくる感覚か…
…
…
…
-----------------
≪ギフト:『』の発現を確認≫
≪トライアルモード終了を確認…これよりリザルトの確認に移ります。≫
≪敵対勢力撃破数…カンストを確認、最高ランク認定≫
≪希少アイテム入手数…108個、最高ランク認定≫
≪味方勢力救出数…カンストを確認、最高ランク認定≫
≪生存時間…82年6か月6日、最高ランク認定≫
≪総合評価…SSSランク…ステータスボーナス、スキルボーナスが最高ランクで付与されます≫
≪特殊条件の確認≫
≪トライアルモードにおける天寿による死亡を確認…称号<殺されぬ者>取得≫
≪称号<剣神>保持者との友好度が既定値以上であることを確認…称号<剣の頂に辿り着く者>取得≫
≪称号<武神>保持者との友好度が既定値以上であることを確認…称号<武の頂に辿り着く者>取得≫
≪称号<創物神>保持者との友好度が既定値以上であることを確認…称号<創造の頂に辿り着く者>取得≫
≪称号<魔神>保持者との友好度が既定値以上であることを確認…称号<魔の頂に辿り着く者>取得≫
≪称号<聖神>保持者との友好度が既定値以上であることを確認…称号<聖の頂に辿り着く者>取得≫
≪複数神位級称号保持者との友好度が既定値以上であることを確認…称号の統合・進化を行います…称号<頂に辿り着く者>取得≫
≪魔王級生命の撃破を確認…称号<勇者>取得及び職業適性<勇者>を獲得≫
≪神話級生命の撃退を確認…邪神の封印実績を確認…称号<神と並びし者>取得≫
≪最高難易度の神代建造物攻略を確認…称号<ダンジョンマスター>取得及び特殊スキル<智慧者>付与≫
≪…
…
…
…取得≫
≪リザルトの確認を終了します…再起動開始≫
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