守りたいのは
放課後、校門の前。
光一と直人は、いつものように肩を並べて歩いている。
「光一、あの子、まだ見てるぞ」
直人が小声で教える。
光一は無表情で、前を見据えたまま答える。
「構わない」
直人は、少し肩をすくめる。
——やっぱり、光一は自分以外のことを考えられない。
——でも、俺が背中を押せば、少しは変わるかもしれない。
そのとき、前方で男子二人がぶつかってきた。
「おい、光一って噂通り強いらしいな」
挑発。
直人は静かに手を振る。
「無視しろ」
だが、光一は一歩前に出る。
その目は冷たく、揺るぎない。
「近づくな」
言葉は短く、理論だけで判断された危険排除。
感情はない。
男子が笑った瞬間、光一は手を伸ばして、相手の腕に軽く触れる。
「光一!やめろ!」
直人の声で、光一は手を止める。
感情のない光一の行動も、直人だけは理解できる。
「危険は排除する」
光一は相手を見ず、直人の顔だけを見た。
直人は小さく息を吐く。
「守るのはいいけど、それじゃ誰も救えないぞ」
光一は首を傾げる。
「理解できない」
直人は苦笑する。
——この子はまだ世界を知らない。
——だから、俺が背中を押すしかない。
遠くで、ひなたが立っていた。
光一は気づかない。
でも直人は知っている。
——あの子は怖がっている。
——それでも、勇気を出して光一に近づこうとしている。
直人は軽く肩を叩き、静かに笑った。
光一は無言で前を向き直す。
直人は、その背中を見守り続けた。
ひなたは、胸に手を当てる。
——怖くても、諦めない。
——光一くんに、私の気持ちを伝える。
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