風が消えた日
嵐の前
街は寝静まり、普段なら街の上を飛ぶ鳥の声と木が風に揺れる音が聞こえてくるはずなのに、今日は何も聞こえない。
幽霊でもでそうな不気味で恐怖を煽る夜。
突然玄関がノックされて僕は慌てて目を覚ました。
僕はあの後すぐに寝てしまったようだ。
フランのことがありながらすやすや寝れるなんて、なんて薄情な男だ。
自分に対してイラついていたが、家の中に誰かが入ってきたのを感じてすぐに思考を入れ替える。
そもそも夜中に来客がくることなんて生まれて初めてだし、なにより昼間のことがある。
何かあったに違いないと考えた。
身支度を軽く整えて部屋の扉を開けると、駐屯所の隊長ヴァンがロゼッタに何かを報告していた。
ロゼッタはずっと起きていたのか、昼と同じ黒いローブに赤いブローチという"クォーツの民"の正装に身を包んで、深刻そうな顔をしながら話を聞いている。
深夜に、まして隊長のヴァンが直接ロゼッタの元へ来るなんて大事だ。
僕は口を挟まずに扉の前で待っていた。
要件はすぐに伝え終わり、ヴァンは足早に家を出ていった。
ロゼッタは黙り込んで何かを考えている。
いつもならすぐに説明をしてくれるのに。
何か嫌な予感がして、全身に寒気が走り口が乾く。
「……し、師匠。何があったんですか?」
少し間を置き、僕を椅子に座らせてからロゼッタは口を開いた。
「……レイ、よく聞きなさい。外西にある遺跡から陰の人が現れました。」
一瞬で血の気が引いた。
陰の人とはこの世界の下にあると言われている場所の住人で、魔物を発現させ、この世界を荒野へと変えた者たちのことだ。
魔物も陰の人も外にある遺跡のゲートを潜ってやってくる。
以前遺跡を壊した国があった。
そこは闇に飲まれ、魔物の巣窟となってしまったという。
その教訓から遺跡は壊さずに封印という形をとっている。
その中でもこの国に一番近い外西の遺跡は強固な封印をしているのに。
…………フランが関係しているのかもしれない。
信じたくない。そういうふうに考えたくない。
頭に重しが乗せられ地面に叩きつけられた気分だった。
「……フランはいたんですか?」
「フランの姿はなかったようです。ですが状況からして彼女が解いた可能性はあります。……彼女は外西の遺跡の伝承についてよく調べていましたから。」
言葉が出ない。……フランが僕たちを裏切るなんて想像できない。
でもこのタイミングで陰の人が現れたのならそうとしか考えられない……けど、僕は決めたんだ。
ロゼッタの琥珀色の瞳を真っ直ぐに見つめ堂々と冷静に決意を言葉に。
「もし封印を解いたのがのがフランだとしても、きっとなにか理由があったに違いありません。……僕はフランを信じます。」
「……えぇ、そうですね。私も理由があると思っています。私たちはフランを信じましょう。」
僕の決意を優しく受け止めたロゼッタは心做しか優しく微笑んでいるように見えた。
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