第19話 決断
薄いブルーのパーティションに区切られた面談室。
佐久間は、二人に書類を並べながら質問に入る。
「では、お二人とも。どのコースを選ぶか、大体決まりましたか?」
「……俺は、宅建コースに行きたいです」
佐久間は驚いたように目を丸くした。
「宅建、不動産系ですか? 松野さんは現場系の訓練を選ぶかなと思っていたのですが、理由を聞いてもいいですか?」
「最初は現場系のビルメンテナンスとか考えていましたけど、せっかくなので違う自分の可能性も見てみたいと思いました。宅建は自分でも聞いたことがあるくらい有名な資格ですし、取れれば自信にもなるし、就職にも有利かなと思って選びました
佐久間は頷きながら、丁寧にメモを取った。
「とてもいいと思います。宅建は就職先の幅も広いですし、不動産会社だけじゃなくて、建築・管理会社・金融にも進めますよ」
俺は、少しだけ肩の力が抜けた
続いて、朝倉が控えめに書類を出す。
「私、経理の訓練コースを希望したいです。簿記2級を取りたいと思っています」
佐久間の目がぱっと明るくなる。
「経理ですか! いい選択ですね。前から数字が得意だったんですか?」
「いえ……得意というほどではないんですけど、よく几帳面だねと言われる事が多いのでもしかしたら向いているのかなと…。ちょっとやってみたいなって思いました」
言葉は小さいが、表情は確かに前を向いている。
佐久間は柔らかく笑った。
「簿記2級が取れれば、会計事務所や経理事務の仕事につながります。安定もありますし、向いていると思いますよ」
朝倉はほっと息をついた。
佐久間は二人に資料をセットし直し、明るく告げた。
「では、松野さんは宅建コース、朝倉さんは経理・簿記コースですね。来月の開講に間に合うよう、手続きはこちらで進めます。お二人とも、自分で選んだ道ですからね。必ずよい結果になりますよ」
二人は同時にうなずいた。
小さな面談室の中で
確かに未来へ向かう音が、静かに響いた気がした
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