黒幕は俺だけど、やったのは俺じゃない~暴走するポンコツ聖女と自滅する敵……それで勝手に罪が増える俺~

社畜のクマさん

邪神のフリした一般人

第1話 指名手配されてる男

「ハァハァ……」

 俺レイア・ヴェ卜ムは追手から逃げていた。

 指名手配されているからだ。


 日々の逃亡生活に疲れ、時々心が折れそうに成ることがある。

 だが無実だと証明出来るまでは……俺は諦める訳にはいかなかった。


 俺の罪?国家転覆罪、及び人類反逆罪という大変不名誉な罪だ。

 勿論俺は全く罪など犯していない。潔白の身なのだ。誰か信じて欲しい。



「大変です!ドラゴンの襲撃が」

 衛兵が俺を追う最中、厄介な事にドラゴンが街の中に入って来たようだ。


「クソ、魔王の下僕のあいつの仕業か!」


 ……勿論違う。そんなわけが無い。


 だが疑われるのには理由が一応ある。


 俺の能力は『認識阻害』

 悪用しなければとても平和な力だ……


 いや……正しく使おうと思っても現場を乱す。

 そう……悲劇の始まり……あれは魔王討伐の時だった。


◇◇◇

「さぁ……みんなこれが最後の戦いだ!」

 勇者オメガは剣を掲げて、俺達を鼓舞する。


「クックック、さぁ来るが良い。最強の四天王と大量の部下を相手にどこまで戦えるかな?」

 俺達人類を追い込んだ、魔王ディザスタと大量の部下達が待ち構えていた。


 最初で最後の大決戦。俺も張り切っていた。


(能力……解放!)


<パチン>

 俺は指を鳴らす。能力発動の合図だ。


 俺の全力の力……俺はこれまで使わなかった。戦わなくても勇者達が勝手に敵を倒してくれるから。

 俺はこれまで勇者のサポートだ。全然活躍してなかった。

 戦いの経験値ばかり溜まっていく、平和な旅だった。


 けどやっぱり最後は全力を使ってみたいと言う好奇心で能力を使った。

 


 いや……あの時の悲劇は本当に忘れられない。

 敵味方同士の認識が乱れた結果、俺達……と魔王達は何故か味方同士で争い合った。


 お互いが敵を攻撃することなく、味方に攻撃を行う。

 控えめに言って地獄絵図だった。


 いや……俺もこんな事になるとは思っていなかったから、早々に能力を取り消したよ?


 でも一度味方に攻撃されたヤツは、混乱したり完全に味方を信じられなくなって、もう辺り構わず攻撃を始めるし……


 やられたらやり返す……

 やったらやり返される……の連鎖は悲劇を産み出した。



「四天王よ……何故だ?どうしてこんな事に……」

 魔王も自らの部下に攻撃されボロボロだった。一応はチャンスだったな。


「アべル、ベティ、ガレス……何故仲間同士で争いを……」

 でも勇者も仲間に攻撃されて……ボロボロだった。


 それはもう悲惨だった。

 だが悲劇の渦中にいながら、全くダメージを受けていない人間がいた。俺だ。


「アイツだ……アイツが唯一攻撃されていない!全ての元凶だ!」

 その場の全員が俺の方を向いた。



「俺は……」

 初めて使う自分の全力にドン引きしていた。どうしようもなく棒立ちしていた。



「レイア……裏切っていたのか?お前は本当は魔王の手先!」

 勇者は激昂していた。


「いや違う!断じてだ!」


 即否定する。……魔王が俺よりも早く。


「このような卑劣なカスが我が同士な訳あるか!」

 魔王ディザスタは真っ向から否定する。


 どうやら俺は勇者達と魔王達の両方から敵対されてしまったのだ。


「この裏切り者め」

「我らが魔族をたばかった罪、万死に値する!」


「魔王」「勇者よ!」

『ここは協力してあの巨悪を討ち滅ぼすぞ!』



 この後の事は言わなくても分かると思う。

 魔族と人間が初めて手を取り合って、協力して俺と言う巨悪に立ち向かう。



 その巨悪が俺でなければ、きっと世界は平和になったと思う。


 俺は死にたく無かった。だって何もしていないから……

 俺は認識阻害してその場から逃げ出した結果、再び敵味方合わせてバトルロワイヤルとなる。

 その後の事は知らん。



 だがその後……『勇者……魔王との死闘の上敗走』というニュースが世間を賑わせた。

 そして勇者を……いや人類を裏切り、貶めた大罪人として俺が指名手配される事となった。


◇◇◇

 強い風が吹いた。意図的な風だった。


 どうやらドラゴンは空中から俺の元までたどり着いた。


「やっと見つけた……レイア・ヴェトム。魔王様を苦しめた元凶にして、貴様が……貴様が我が両親の……仇」


 魔王を追い込んだ為か、俺は人間だけではなく魔族や魔物からも追われている。

 もはやね……この世界に自分の味方は一人もいない気がしているんだ。


「争いはやめよう?俺は平和に暮らしたいんだ」


「ならば何故我が両親を殺した!」


(俺は殺してない……多分、味方同士殺し合って自滅したなんてこの空気では言えない)


 ドラゴンの鋭い爪が俺を八つ裂きにしようとした。


<パチン>と俺は指を鳴らした。


『認識阻害』

 能力を使う。敵が俺を認識出来なくする能力。


「クソが……どこに消えた!」


 目の前にいますよ?まぁ俺を認識出来ないからしょうがないか。

 簡単に言えば今俺は敵から認識されていない。つまりは擬似的な透明人間だ。


「成敗」

 俺は剣を抜き、一撃で敵を葬る。


 これでも俺は元勇者パーティのメンバーだからな。

 勇者と役割が被るので、最後の最後までほとんど戦う事はなかったけど……



 今の俺には安息などは無い。

 何故ならこの世界の全員が、俺を勇者を裏切り魔王に卑劣な行いをし絶望させた最悪の人間だと認識しているから……

 世界の全員が敵なのだ。



 でも俺は平和を愛している。誰も傷つけたくはないし平穏に暮らしたい。

 一刻も早くこの悪夢を終わらせる為、冤罪を晴らさなければならない。

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