第2話 瓦礫はトレーニング器具じゃない!
無事?
殿下とアラン様も一度公都に行かれるので同道している。
まだ幼い殿下はアラン様と共に馬車で移動されている。
当然、私は徒歩だ。
徒歩なのは良いんだよ?
今までも余り馬に乗って移動していなかったからね?
徒歩は慣れたものだよ?
帝都の城壁の瓦礫を背負っていなければね?
『弟子にするとは言ったものの、お主は身体からしてなっておらんッ! まずはこれを背負えッ!』
と背負子を渡されて、背負ったら――
『身体強化は出来るなッ!
今すぐやれいッ!』
と言いながら何処からか出して来た瓦礫を背負子に乗せて来た。
どゆことっ!?
もう、死にたくないから、慌てて身体強化の魔法を掛けたよっ!
『ふむッ! 流石はワシが見込んだ弟子であるなッ! ふむ、もう少し行けそうだなッ!
これで良しッ!』
そう言って、さっきの二倍くらいある瓦礫を乗せて来たッ!
ふんぐっ、ぐぐぐ……『もう少し』とは?
既に死にそうなんですけどっ?
『ふはははははッ! 良い、良いぞッ!
では、参ろうかッ!』
何言ってんの? まさか、これで歩けと?
『ほれッ! 遅れるなッ! 歩かんかッ!』
良く見ると師匠は私の十倍以上の瓦礫を背負い、人より大きな瓦礫を両手に鷲掴みしながら歩いているッ!?
人が出来る範疇に無いんですけど!
ただ、気を抜くとマジて潰れる未来しかないので、道中『ぐぎぎぎ……』と言いながら本隊に離されながらも着いて行った……。
本隊に追い付き、漸く僅かばかりでも休めるかと、淡い期待をしていたら――
『ふむ、休憩所に着いたか。
では、そのまま休憩だッ!
この〈すくわっと〉と言う動きをしながら休憩だッ!』
この師匠、ダメなヤツだ……。
休憩って知ってる?
《一息いれて休む》事だよ?
何でトレーニングしているのよ?
もう汗は凄いし、喉もカラカラで、昭和の部活かってくらい水も飲んでいない…………死ぬぅ。
『ぬッ! そろそろ休憩も終わるなッ!
水分補給だッ、これでも飲めッ!』
と言って師匠が良く振ってから渡された筒を開け、一口飲むと、とても重たく、液体とも言い難い飲み心地がする物体が喉を絡めながら入って行く……。
後味から察するに牛乳に砂糖と何かの粉を混ぜた感じがする……この味どっかで……?
「し、師匠……? これは一体何でしょうか?」
「ふむ、それは〈きな粉〉と言う煎った豆を粉にした物を牛乳と合わせた飲み物でな、大層筋肉にキく、有り難い飲み物だッ!」
何? きな粉をプロテイン替わりにしてんの? 確かにたんぱく質は沢山入っているけど、体への吸収率が違うし、吸収も遅いんですけど?
「師匠、これ意味が無くはないですけど、効果的とは……?」
「ぬ、お主中々やるのう、イシュ坊もそう言っていたわいッ!
だが、きな粉も牛乳も筋肉の素になるのであろうッ!
ならば大量に飲めば良いッ!」
イシュ坊って誰よ?
「いや、取り過ぎも良くないのでは……?」
「ぬ、お主益々やるのう、流石はワシが見込んだ弟子じゃ!
確かにイシュ坊もそう言っておったわッ!
じゃがッ! それは身体を壊してから言えいッ! まずは飲むのだッ!
そして食うのだッ!」
ヤバい……この人ヤバ過ぎる!
でも弟子になるって言っちゃったし、何より今更辞めるとか言って殴られでもしたら、私絶対に死ぬよね?
絶対この人、熊どころじゃないもん!
しかも、今逃げてもお金も無いし、行く宛なんてないし……ヤベッ、私詰んでね?
こうして、食事休憩まで一度も瓦礫を降ろさせてもらえずに歩き続けた。
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