きな粉はプロテインの代わりじゃありません!

ナナシ(仮)

第1話 ソーニャの弟子入り

 私はソーニャ、ただのソーニャ。


 これ、一度言ってみたかった。


 気が付いたらこの世界に転生して早、十七年。 帝国では十五歳から徴兵の対象だから、もう兵士として三年経つ。


 この世界では、女性も前世より普通に兵士として戦う。


 だって、剣と魔法のファンタジーの世界だから!


 村に領主の所から徴兵執行官が来た時に、真っ先に名を上げられたのが身寄りの無い私。


 元冒険者だった両親は私が十三の時に他界したけど、両親が拓いた畑や魔物を狩って、その素材や魔石を売って生計を立てていた。


 因みにお肉は美味しくいただきました。


 前世は目が合ってる様に思えて怖くなるから、買った魚ですら捌けなかった私が、今や魔物を見るとご馳走にしか見えない。


 人は環境によってコロリと変わるものだとつくづく、思う様になった。


 魔物の肉を村の皆にお裾分けしたりして、村には貢献していた筈なんだけどなぁ。


 やっぱり、村長ん所の馬鹿次男の求婚を断ったのが、いけなかったのかな?


 そんな感じで見事、村から売られる様に兵士になったんだけど……これが以外と居心地が良かった。


 帝国はある程度までなら本当に実力主義だったので、既に魔物を狩って、盗賊も狩っていた私は兵士の中でもメキメキと力を付け、二年目には部下を二十人任される中隊長に任命されていた。 


 三年目には腕も立ち、それなりに見た目も良かった私は帝都で儀礼騎士隊の見習いとして抜擢された。


 運が良かった事に上司にも恵まれた。


 帝都の騎士は、騎士とは名ばかりの血筋だけ良い下衆達の集まりが多いのに、上司のアラン様は家柄良し、人柄良し、実力良しの素晴らしいお方だ。


 もし、アラン様の部下で無ければ、今頃下衆どもに何をされていたか判らない。


 実際に他の隊では当たり前の様にあったらしいし。 本当にアラン様ありがとう!



 しかし、帝都で後に魔女と呼ばれる女が台頭して来た事により帝都は様変わりして、魔女によって真っ当な人達は粛正された。


 また魔女は、怪しい術で人々を生け贄として捧げて化物を召喚し、それを止めようとした陛下に逆心をあらわにして、次々と皇族をも生け贄にし始めた。


 これに危惧を覚えた陛下はアラン様に末子であるレムス殿下を託し、敵国である公国に亡命する様に密命を授けた。


 私達はアラン様の指揮の下、迫り来る化物達を多くの犠牲を払いならがらも帝都を脱出する事に成功した。


 そして、潜伏先の村の近くを通った公国の公子の軍に投降し、無事に亡命を果たした。


 その後、公子達の活躍で見事、魔女は打ち倒され、その後帝国も滅亡し、帝国領は公国に倂呑された。


 レムス殿下も無事亡命も果たし、アラン様は殿下に付き添い、後見人となられる様だが、私達見習い騎士や一般兵は兵役を解かれる事になった。



 困った。



 急に『自由だよ』と言われても、身寄りも無いし、あの村には戻りたく無い。

 

 それに命からがら帝都を逃げ出して来たので、お金手持ちが殆んどない。


 かと言って何が出来る訳でもないし、基盤が無い私が、なけなしの知識チートなんて出来る由も無い。


 取り敢えず冒険者にでもなって、お金を貯めるかな、と思っていたら――


『その娘ッ! お主、見込みがあるっ!

 弟子にしてやろうッ! ついてこいッ!』


 天をも裂きそうな大声が響いた。


 周りには娘どころか、女性は私だけだったので、きっと私に向けられた言葉なんだろうね? 振り返ると、正にガチムチと言った巨漢が立っていた。


 二mは優に超える巨体で、腕なんか私の胴体より全然太い。


 肩まで筋肉が盛り上がっているので、まるで首が無い様にも見える……誰?


「あ、あのぅ、今のは私に仰ったのでしょうか?」


「そうだッ! ここに娘はお主しかおらんだろうッ!? ワシはお主を弟子にすると決めたッ! ついて来いッ!」


 私の意思は?


 普通、弟子になりたい人が『弟子にしてくれ!』って言うんじゃないの?


 ……でも、良く見ると腰に着いている意匠は公国の将軍の物だ。


 てか、この紋章って何処の公国だっけ?


 と言う事は、結構いい待遇の転職先が見つかったんじゃね?


 弟子とかは良く分かんないけど、この人の部下になるって事だよね?


 その日暮らしの冒険者じゃなくて、衣食住揃った、安定した職場だよね?


 公国は帝国と違って無体な事をしないって一兵士の私まで噂が伝わってるし?


 チャーンスッ!! このチャンスを逃す訳にはいかないよねっ!


「ありがとうございますっ!

 私はソーニャと申しますっ!」


「よしッ! では行くぞ弟子よッ!」


 今思うと……この時、もう少し考えておくべきだったと思う……このガチムチ師匠の弟子になる事について……。

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